- 著者:矢作 俊彦
- 『THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ』 (角川文庫)
神奈川県警の二村は、偶然出会った元撃墜王だという飛行機乗りのビリーと酒を飲む。
後日、二村の元にビリーが「友人として手伝って欲しい」と現れる。
二村は裏に何か犯罪の匂いを嗅ぎつけながらもビリーの手助けをする。
『リンゴォ・キッドの休日』『真夜中へもう一歩』に続くシリーズ三作目で、タイトルから見てとれるようにレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』へのオマージュが込められた作品。
ただしこちらはLONGではなくてWRONGなので「悪いお別れ」となりますが、作品そのものは矢作俊彦版『長いお別れ』という事で基本的なストーリーはチャンドラーのものを踏襲されており、雰囲気もばっちり。
主人公である二村はどこか人生を斜めから見ていて、素直に生きることが出来ない不器用なところが。
そしてそれが例え世間的に見れば悪く見える事でも自分の中にあるものは決して変えない頑固者でもある。
自分の倫理に基づき行動する二村は「いい警官」では無いと自分自身で何度もいうような男。
だからこそ二村の元に現れ二村を愛する者は二村の前から再び消えていってしまうのではないでしょうか。
最初から最後まで雰囲気を堪能できるんですが、二村が追う事件が二村自身が求めているものに関係無く大きなものになっていくに従い、しっかり集中して読んでいないと読者の方が色んな部分で見失うものがあるかも。
腰をすえてじっくり読みたい作品ですね。