- 著者:テッド・ルイス 訳:土屋 晃
- 『ゲット・カーター』 (扶桑社ミステリー)
大都会の暗黒街で生きてきたジャック・カーターは兄の葬儀の為に故郷に帰ってきた。
だが、兄が酒に酔って車で転落などあり得ないと考えていたカーターはある決意を抱いていた。
その帰郷は、暗黒街のボスにとっても地元の裏社会にとっても好ましくないものだった。
以前『殺しのフーガ』という邦題で角川文庫から出ていた本書が原題にタイトルを戻してこのたび扶桑社より復刊です。
また、映画化もされておりマイケル・ケイン主演で「狙撃者」というタイトルで。
そしてシルヴェスター・スタローン主演で「追撃者」というタイトルでリメイクもされているそうです。
今回の復刊で読むのも初めてであり映画化されていた事も初めて知った訳ですが、英国ではノワールの代表作として評価が高いと言われているのも納得の内容。
雨に煙る故郷に戻ったカーター。
兄の死の真相を探りそして決着を着けようとする様を、感情を押し殺し乾いた文体で描かれのですが、それは目的を果たす為に誰かが犠牲になるのも厭わないカーターの冷たい眼差しが目に浮かぶようです。
また兄とは反目し、互いに理解し合えない仲で絶縁状態だったカーターの兄に対する想いは愛憎あいまっており、複雑に絡み合う登場人物との関係共々読む者を突き放すかのようだけれども、最後の最後まで戦い抜くカーターの姿には何故か心惹かれるものが湧き起こるでしょう。
ちなみにラストシーンまで読者を突き放すかのようで、この辺りは好き嫌いが分かれるところかも。
自分はもうちょっと何か描写して欲しかったかな。
残念な事に「狙撃者」というタイトルの映画版も非常に評判がいいらしいものの、日本では劇場公開だけされたのみで未だにビデオ化されていないらしい。
これを機会にDVD化。
そしてテッド・ルイスの他の作品も紹介して欲しいものです。