- 著者:大沢 在昌
- 『天使の爪 (上)』
- 『天使の爪 (下)』 (角川文庫)
脳移植を受け別人の、それも美しい体に生まれ変わったアスカは麻薬取締官として働いていた。
ある日、麻薬取締部がロングコートを羽織っただけの全裸の女一人に襲撃される。
同僚を人質にした女は犯罪者の引渡しを要求してくる。
アスカはかつての警視庁での同僚で恋人の古芳と久しぶりにコンビを組んで人質救出に向かう。
『天使の牙』の続編。
脳移植によって、人格はかつての勇猛で強靭な心を持ちながらも美しく脆弱な体に生まれ変ったアスカの物語。
文庫化を心待ちしていた作品です。
前作『天使の牙』でのクライン事件ではフィアのボスの情婦だったはつみの体に脳を移植され潜入捜査をしたアスカははつみの体が覚えている事と自身の心の間で苦悩し、また誰も信じられない状況で孤独な戦いを強いられたが、なんとか全てを乗り越えたかのように見えた。
けれど、強い肉体から美しいけれど弱い体になってしまった事から、強さは努力だけでは作れない事が分かり、現場で働きたいと願いながらもクライン事件によって警視庁内でも一部のものしか知らない秘密そのものとなってしまったアスカは、麻薬捜査部でデスクワークを余儀なくされている事と、結婚寸前までいっていた仁王(古芳)との間でも距離ができてしまった事で思い悩む日々を送っていた。
しかし、ようやく現場で働く機会がまわってきた時、過酷な運命がアスカを待ち受ける。
大きな陰謀と、アスカと同じように脳移植を受けたロシアの犯罪者との対決を通して、アスカはかつて所属していた警視庁からの疎外感、そして自身のアイデンティに思い悩む。
だが、逆に今回の事件を通してアスカは自分自身を取り戻していく。
特に恋人である仁王と、愛を交わす事で今まで仁王がアスカを愛しているのか、それともはつみの体を愛しているのか、自分で自分を納得させる事が出来なかったアスカが、ようやく全てを受け入れるようになる様はなかなkに感動的で、その様子は文庫で上下巻共々500ページ以上あるものの一気に読ませるものがある。
しかしながら残念ながら前作を超える事は出来なかったようだ。
それは、色々な視点から描かれている事や、事件そのものが国際的な大掛かりなものであった事によって、物語そのものが持つべきだった焦燥感や緊張感が損なわれているからかも。
もう少し焦点を絞られていた方が緊迫感がより感じられたのでは。
少々残念な点はあるものの、前作のファン、というかアスカと仁王のコンビのファンは読んでおきたいところですね。
