- 著者:荻原 浩
- 『サニーサイドエッグ』 (東京創元社)
フィリップ・マーロウに憧れる私立探偵・最上俊平の元に舞い込む依頼は美女捜しならぬペット捜しばかり。
今度の依頼はいなくなった猫。
依頼人はとびきりの美女。
張り切って猫を捜そうとする俊平にはワケ有りの少女が相棒が。
そして新たに猫の捜索依頼が舞い込むが、依頼人はヤクザ?!
『ハードボイルド・エッグ 』の続編となる本書。
前回の相棒(秘書)は80過ぎのお婆ちゃんでしたが、今回はちょっとワケ有りの少女アカネ。
美女の依頼でロシアンブルーを捜す俊平は、名前は違うが同じくロシアンブルーを捜して欲しいという殆ど強制的なヤクザから依頼を受ける。
二件の猫探しを同時に行う事になった俊平は、相棒にしてしまった少女・依頼人のヤクザに振り回されながらも必死で捜索します。
今回の話で興味深かったのは、捜索するにあたって描かれる猫探しのポイントや猫の習性でしょうか。
実際に猫を飼った事はないので、猫の習性って知ってるようで実は知らなかったので面白く読めました。
ところで前作同様楽しめるのは、フィリップ・マーロウに憧れ気障なセリフや減らず口をヤクザや警官相手に思わず叩いてしまうが、心の中ではびびってる俊平の様子ですね。
物語は俊平の一人称で進められるのですが、自分をクールな人間に見せようとするけれど、その実優しさとちょっとした勇気を持ち合わせた意外に男らしい様は、前作よりも人間的に成長し、なんとも格好よく見えてしまうから不思議(笑)。
ただ、個人的にはもう少しヘタレっぷりを見せてくれた方が面白かったかな。
相棒となった少女アカネとの絡みが意外に少なくて、この少女をあえてあのようなキャラクターにした意味が希薄に感じられたのが少々残念。
そういった意味では前作の方が楽しめたかな。
もし更なる続編が描かれるなら是非ともアカネを再登場させて欲しいですね。
それにしても、やはり荻原さんはラストの一文がうまいですね。
いつもラストは印象深いですが、今回は思わずニヤリとさせられました(笑)。