『ウィンブルドン』 ラッセル・ブラッドン | 固ゆで卵で行こう!

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著者:ラッセル・ブラッドン  訳:池 央耿
『ウィンブルドン』 (新潮文庫)

ウィンブルドン決勝戦、センターコートには親友同士であるキングとツァラプキンが立つ事に。

だが試合開始直前に大会事務局に一本の脅迫電話が。

それは、試合終了までに要求が呑まれなければ女王と試合の勝者の命を奪うというものだった・・・!





テニス、それもウィンブルドンの決勝戦を舞台にしたサスペンス小説で、随分前に友人から本書を紹介されていたんですが、先日古本屋さんで発見する事ができてようやく読めました。


ウィンブルドンのセンターコートをハイジャック(コートジャック?)するという、なかなか奇抜なアイデアはそれだけでも魅力的。


キングに出会い、ソ連という国による呪縛から解き放たれて純粋にテニスを愛する事ができるようになったツァラプキンが、ファイナルが始まる直前に読んだ脅迫文が、これをキングが読めばその直情的な性格から試合をたちどころに終わらせ自身の命を失わせる危険を冒そうとすることは間違いないと確信し、キングにはこの事を知らせずに試合をひたすら長引かせようと白球を追う様子は、捜査陣の焦燥感を煽るように何度も何度も続けられるラリーを通して緊張感が高まっていくあたりはサスペンスとして一級品だ。



しかし、本書の魅力はサスペンスとしての部分よりも、決勝で戦う二人の選手の友情を描いている所にある。

オーストラリアのトッププレイヤーである23歳のキングが、若きソ連のプレイヤーである17歳のツァラプキンと出会う事によって、言葉や習慣の壁を越えて友情を育み、そして二人が最高の舞台であるウィンブルドンのセンターコートで演じる死闘を通じて互いに成長をみせる様子は、その白熱する試合展開で飛び散る汗のように煌いて見える。

そう、これはテニス・サスペンスの名前を借りた青春小説なのだ。


どんな難しい球でも拾いに行こうとする直情的なプレーヤーであるキングと、芸術的で逆にそれが勝利への執念に欠けてみえるツァラプキン。

そのプレースタイルとしては対照的な二人が冒頭、海岸にある岩の上で言葉の壁を越えて通じ合う様子はその後の二人の友情のように美しい。

だが、ウィンブルドンのファイナルが終わった時、二人の友情はこれまでと違ったものになるだろう。

それは青春の一ページが終わった事を示すのだけれど、二人にとってはより強い絆が結ばれた瞬間でもあるのかも知れない。





ところで惜しいと思うのは、サスペンス部分でいまひとつ説明不足な点があるところだろう。

その辺が最後まで気になってしまったのだが、もしかして自分が読み落としてただけだろうか(汗)。