- 著者:北方 謙三
- 『水滸伝(10) 濁流の章』 (集英社文庫)
誰もが認めるただ一度の勝利。
それを命じられて呼延灼率いる代州軍が動く。
宋という国の在り方に含むものがあっても、梁山泊に対して一度の勝利を目指す。
大砲を使い、連環馬を使い、晁蓋の首を取ろうと戦にのぞむが、その戦のあとに呼延灼が見るものは・・・。
戦の中で人は死んでいく。
その中で人と人の繋がりというものは不思議なものだ。
戦をする為に人が集うのは晁蓋が言うように「志」を持っているから、だけではない。
呼延灼が史進や穆弘と語り合った時の言葉が胸を熱くする。
戦の中で死んでいった者たち。
それを忘れるわけではない。
しかし、ただ憎しみ合って戦っているのではないからこそ、敵同士であったはずの者たちの間にも心が通じ合う時がくるのだろう。