『赤い羊は肉を喰う』 五條瑛 | 固ゆで卵で行こう!

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時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

著者:五條 瑛
『赤い羊は肉を喰う』 (幻冬社)

内田偲は最近流行のブランド「kohaku!」が、自身が勤める小さなリサーチ社がある下町、八丁堀に進出してきた頃から、平穏な下町で今までなかったような犯罪が増え始めた事に気付く。

偲の心をざわめかせるのは「kohaku!」の赤と黒の大きな布のディスプレイ。

この町で何が起ころうとしているのか、選挙戦の陰にうごめく不穏な雰囲気の中、知り合いの女子大生が失踪し、そして・・・。





五條瑛の最新作は、ここ最近の著者の中でも最もお気に入りの作品になった。


主人公の内田偲はいわゆる計算屋で、たとえばあるアパレルメーカーからの依頼では駅前のビルに出店しようとした時、最寄駅の利用客の人数や、その利用者の内訳は学生・サラリーマン・主婦などどれが多いのか、また最も利用する時間帯などを調査し、それを数字に表してクライアントに渡すといった仕事をしている。


社長を含め3人しかいない弱小計算屋で、下町の雰囲気に染まり普段はのほほんとしている偲が気付く“意志”

それは大衆の意識をコントロールしようという何ものかの悪意ある意識。

いったい誰が何の為にコントロールしようというのか分からないままに調べ始めると、それは近々行われる選挙に絡みワタナベ・グループという謎のグループがかつて提唱していたナチス・ドイツも実験していたという理論に突き当たる。

その理論に心惹かれるものを感じつつも、その悪意に嫌悪感を抱く偲が辿りつく真実と直面する現実。

それは偲の心に大きな傷を負わせる事になる。

けれども偲自身が持つ強さは直面した現実をも変えてみせようとする困難な道を選ばせる。


実際にはこの作品内にあるような事柄で人の潜在内に抑えられている意識が発露するような事があるのかどうかは分からないし、出来ればそのような事があって欲しくないと思う。

しかし、作中でペンギン・コロニーに例えられるように“群れの最初の一羽が行動を起こせば他のものがそれに習う”事はありえるし、実際にその通りなのじゃないかと思わされるのが怖いところ。

だからこそ主人公の偲のように善意ある意志、意識を持ち続けられる強さを持ちたいものだ。



ところでこの作品は単発ものではあるが、著者の他のシリーズともリンクしている。

いわゆる“鉱物”シリーズと呼ばれる『プラチナ・ビーズ』『スリー・アゲーツ』の登場人物も出てたりするので、そちらも読んでおくとより一層楽しめるかも(もっともそれをいうなら“革命”シリーズなどともリンクしてる事になるけれど)。

で、個人的にはこの“鉱物”シリーズの続きが読みたい。

今の時代、難しいのかも知れないけれど、そろそろどうでしょ五條さん?(笑)