- 著者:ドン・ウィンズロウ 訳:東江 一紀
- 『砂漠で溺れるわけにはいかない』
二ヶ月後に結婚式を控えたニール・ケアリーの元に舞い込んだ簡単な仕事。
それはラスヴェガスにいる86歳の爺さんを家まで連れて帰るだけの事。
しかし、かつて名コメディアンだった老人にニールは煙に巻かれてしまう。
“ニール・ケアリー”シリーズの5作目にして最終作。
『ストリート・キッズ』で強烈なインパクトを与えてくれた新しい探偵小説の面影は感じられない。
それは前作の『ウォータースライドをのぼれ』からそうであったが、もうほとんど別の作品のよう。
しかし面白くないわけではない。
コメディ色が強烈に強まっており、子供を欲しがるカレンとの会話や、名コメディアンだったネイサンとのやりとり、そしてニールの独白部分は笑わずに読むことは難しい。
でも、やはりシリーズ初期の、困難な事態に直面しても、持ち前の減らず口や反骨心で立ち向かうニールの繊細な内面が描かれる青春冒険小説に魅了されたものとしては物足りない。
勿論ニールも年を取ってはいるし成長している訳だけれど、こうまで作品の雰囲気が変ってしまうとは・・・。
それでも、今回はカレンが子供を欲しがる事によって、ニールが自分自身に向き合う事になり、「父親」というもの、「父親」になるという事を考えた時に、ニールが「父さん」と呼ぶ探偵術の師匠であるグレアムに語る一文には目頭が熱くなった。
著者はシリーズを再開させるつもりがあるようだが、自分自身に向き合い、より成長したニールに会うのは怖いようでもあるけれど、やはり楽しみでもある。