「ブラック・ダリア」 映画と原作 | 固ゆで卵で行こう!

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ブライアン・デ・パルマ監督の「ブラック・ダリア」観てまいりました。


原作はノワール文学の傑作と言われるジェイムズ・エルロイの同名の小説。

実際にあった未解決の猟奇殺人事件の真相を巡るフィクションだが、原作がそうであったように映画の方もその当時の雰囲気を楽しめた。


全編に漂う紫煙をフィルターにして描かれる1940年代のアメリカ、ロサンゼルス。

監督のこだわりが伺えるように丁寧に背景が映し出されている。

こういう雰囲気作りは重要。

映画を観る楽しみはストーリーだけじゃないって事があらためて感じられる。


で、ストーリーの方ですが、原作は結構長い上に、ダリア事件とは無関係の出来事も多いので映画の方ではバッサリと削ってあります(ヴォーゲル刑事親子のあたりとか)。

それはダリア事件と主人公二人の刑事に主眼を置く上では正解・・・だったはずなんだけど、ドラマ部分とミステリ部分の融合が、残念ながらうまくない。


ドラマ部分ではバッキーとリー、そしてケイの微妙な三角関係や、バッキーが出会うマデリンとの情事など、それぞれがどう考えているのか分かりにくい。

特にファイアことリー刑事の内なる狂気や、バッキーが何故マデリンに惹かれるのかは分かりづらい。

それでも後半まではそういったドラマ性が主に置かれていたのが、ところどころにあった伏線が終結する最後の謎解きは駆け足を描かれているために、観ているものは追いかけるのがやっとの状態になるかも。

事件に解決が必要なのは分かるが、なだかとって付けたような印象を受けた。


個人的にはもう30分ぐらい長くなってもいいので、それぞれの内なる狂気、そして当時のロサンゼルスやアメリカに潜在していた狂気を描き出して欲しかったかな。


あ、それと思ったのが・・・思ったよりエロっぽくなかったなぁって事(笑)。

おう少し全編にエロチズムな香りが流れていると、もっと退廃的で猥雑で、それでいて活気のある様子が感じられたんじゃないかなぁ。

まぁ、それだとR-18になってしまうだろうけど(笑)。



なお、原作のなんちゃって感想はこちら