- 著者:ジェイムズ・サリス 訳:鈴木 恵
- 『ドライブ』 (ハヤカワ文庫)
映画のスタント・ドライバーだった「ドライバー」は、副業として強盗の一員として逃走車両の運転専門として仕事を始める。
だが、あるヤマで強盗グループ内で裏切りが。
危うく難を逃れた「ドライバー」は、裏切りの黒幕を探すべく車を走らせる。。。
「シンプル・イズ・ベスト」
そんな言葉が思い浮かぶような、無駄な部分を削ぎ落としたカー・クライム・ノヴェル。
しかし、シンプルなようでいて深い。
読了後にもう一度読みたくさせるような余韻を与えてくれる事は間違いない。
主人公の「ドライバー」は強盗の一員となってもその計画に一切関わりをもたず、単に逃亡用の運転手として仕事を引き受ける天才ドライバー。
そうやって物事に距離を置いているように見えて、その内面には自分の走る道がしっかり見えているようだ。
物語は時系列に沿ってではなく主人公の過去が、それも順番もバラバラに挿入されて描かれている。
母親の事、愛した女の事、車の運転の師匠の事、そして友・・・。
淡々と描いているようでいて「ドライバー」の内面がじわりと浮かび上がってくるようだ。
とにかく本書はその薄さとは裏腹に強い印象を与えてくる。
著者の作品には初めて触れたが、他の作品も読みたくなった。