- 著者:マイケル サイモン 訳:三川 基好
- 『ダーティ・サリー』 (文春文庫)
同僚への暴行行為で審問会を控えるオースティン警察殺人課部長刑事のダン・レリスは、バスに轢かれて死亡した若者の事件現場へ向かったところ、その近くで首と四肢を切断された身元不明の女性の死体を見付ける。
“ダーティ・サリー”と名付けられた殺された女性の捜査を始めると、市の有力者の元に残された体の部位が次々と届けられ始め・・・。
主人公は相棒であり、また刑事として師と仰いでいたジョーイの死から立ち直れず、殺人課内で対立する同僚に暴力を振るってしまい審問会を目の前に、殺人課の刑事という自分の地位を守るためにも事件に集中。
しかし、ジョーイの妻であったレイチェルへの思い。
死ぬ直前の自分の知らないジョーイ。
対立する同僚。
自分のルーツに対する暗い過去。
色々な要素がレリスの心を侵食。
心の闇を払うかのように自宅で音楽に合わせて自己の中の怒りに似たものを発散させようと、一心不乱にドラムを叩くレリスの荒々しい感情が、作品全体に流れている様子がなかなかいい。
実際には作品自体は全体的に見るとまだまだ荒削りな印象を受ける。
しかし、レリスの自分自身持て余すかのような心情に実にあっているのが奇跡的だ。
事件は“ダーティ・サリー”の事件とは別に、市の中で行われているある不正な出来事を調べるように頼んできた若者によって大きな局面を与える。
その時レリスが、自身の中の闇を自覚しつつも、死んだジョーイが言っていたように“よい警官”である為に捜査をやり抜こうとする・・・。
シリーズの第1作目という事もあって、色々と含みを持たせつつラスト迎えるせいもあって、2作目の邦訳が待たれるところだ。