- 著者:笹本 稜平
- 『太平洋の薔薇 (上)』
- 『太平洋の薔薇 (下)』 (光文社文庫)
船乗りとして最後の航海に臨んだ船長の柚木。
その航海の舞台は、奇しくも自身が初めて操船した<パシフィックローズ>号。
横浜に向かう帰路、順風に見えた航海も海賊に襲われる。
襲っても金目のものはない船を何故襲ったのか。
海賊達の狙いが分からないまま、柚木は海賊の指示を受け嵐の海へと船を動かす。
笹本陵平の作品を読むのはこれが2作品目。
初めて読んだのは先日読んだ『時の渚』 であるが、同じ著者が書いたとは思えないほどの作風の違いにはビックリした。
気になる、というか少々鼻につくのはセリフまわし。
特に柚木の娘である海上保安庁からクアラルンプールにある国際海事局海賊情報センターに出向中の身であり、事件に対応する夏海のセリフ、また心の内の描写が、まぁ、なんというかクサイ(汗)。
しかし、その辺が若干気になりつつも、事件は民族の誇りを国際社会に見せようとする国際テロへと発展しようとしていく様子、そしてそれに立ち向かおうとする伝説的な船長柚木の勇気ある行動などにグイグイ話に惹き込まれた。
嵐の中、神がかりなまでの操船を見せる柚木。
船員の命を守るためにテロリストたちに従わざるえないが、自分の命を懸けて戦う事になる柚木。
そしてその行動が、パシフィックローズを見守るもの達を命懸けの行動に移させる場面は美しく、また感涙ものだ。
確かにわざとらしいまでにクサイ描写はあるけど、それもこれも全ては愚直なまでのストレートな冒険小説として読者に真正面から向き合っている為。
その熱さは全ての冒険小説ファンの胸を打つはずだ・・・!