- 著者:マイクル・ムアコック 訳:井辻 朱美
- 『この世の彼方の海 (永遠の戦士エルリック②)』 (ハヤカワ文庫)
窮地に陥っていたエルリックの前に、霧に包まれて現れた一隻の船。
その船に乗船させて貰ったエルリックは、エレコーゼ、コルム、ホークムーンの3人の戦士と出会い、<一なる四者>として戦いに挑む事になる・・・。
表題作の「この世の彼方の海」ほか、エルリックのシリーズでは一番初めに発表されたという「夢見る都」。
“死せる神の書”を探し求める冒険譚「神々の笑うとき」。
それにエルリックの宿敵セレブ・カーナが初登場する「歌う城砦」が収録されたエルリックの復刊シリーズ第二弾。
なんといっても、あまたの次元で繰り広げられる<混沌>と<法>の戦いの中で自身のあまたの化身ともいうべき永遠の戦士であるエレコーゼやコルム、そしてホークムーンが一同に介して戦う事になる「この世の彼方の海」には興奮させられる。
そして初めてムアコックの作品に触れた方の為にも是非ともエレコーゼやコルムの物語も復刊を果たしてほしいところ(ホークムーンの復刊は決定しており、間もなく発売される)。
そして「夢見る都」では、エルリックがこの先“親族殺し”や“女殺し”と呼ばれるようになる、自身の王国であるメルニボネを自らの手で崩壊させる悲劇の物語。
その悲劇の主役たる魔剣<ストームブリンガー>の存在が実に大きく、そして恐ろしく描かれており圧巻。
また、「歌う城砦」ではエルリックの宿敵たるセレブ・カーナ登場と言う事で、実に懐かしく読めた。
先に発売されてる復刊シリーズの第一巻よりも、エルリック自身が鮮やかに描かれおり、「歌うイ城砦」でイシャーナ女王が言うように“繊細にして残忍、冷酷にして誠実”そしてエルリック自身が言うように“世事に無関心、しかして執念深し”という、その複雑なキャラクター性がいかんなく発揮されて、より感情移入しやすくなっている。
なので、一巻以上の面白さは保証!
てな訳で未読の方は一巻から読むように(笑)。