『時の渚』 笹本稜平 | 固ゆで卵で行こう!

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著者:笹本 稜平
『時の渚』 (文春文庫)

私立探偵の茜沢の元に癌で死期が迫っている老人から、35年前にある理由から生き別れになった息子を捜し出して欲しいという依頼が舞い込む。

一方、三年前、茜沢自身も警視庁の刑事だった頃に、ある殺人事件の犯人が逃走中に妻と息子を車で轢き逃げし、それによって二人とも亡くしていたが、新たに発生した殺人事件でその犯人に繋がる事実が浮かんだ事を、かつての上司から知らされ二つの事柄を平行して調査し出す。

(第18回サントリーミステリー大賞&読者賞ダブル受賞作)






3年前、事件の関係者は捜査には関われない事から警視庁を辞職し、妻と息子を亡くした喪失感から立ち直れないでいる茜沢。

その茜沢が依頼者である老人の息子を捜すうちに、自身が追っている家族を殺した犯人との関連が浮かびあがっていくのだが、その事件との関連が簡単には終わらず、2転3転とする構成も見事。

そして茜沢が事件を追った果てに突きつけられる真実は、実に大きな痛みを伴って現れる。

その痛みには思わず感情移入してしまい、涙が・・・。


とにかく終盤にドラマが待っている。

それまでは割合オーソドックスなハードボイルド系ミステリで、老人が生まれたばかりの息子を託した見ず知らずの女性の数奇な運命や、茜沢が家族を殺した犯人を追う過程が、読み口も優ししせいもあってサクサク読めるのだが、そこに騙される展開が最後に待ち受けているのだ。


流れた時の中に隠された真実の痛み。

それを受け入れるのは簡単ではなく、それこそ時が必要かも。

だが、その重みに耐え切れなくなった時、涙と一緒に洗い流してくれるのは優しい真実と人の暖かみかも知れない。