- 著者:ケン・ブルーウン 訳:東野 さやか
- 『酔いどれ故郷にかえる』 (ハヤカワ文庫)
アイルランドに戻ってきたアル中で元警官のジャック・テイラーは、ティンカー(ジプシー)のスイーパーという男から仲間のティンカーを殺している犯人を見つけ出して欲しいと依頼される。
ジャックは酒やコカインに脳内を侵されながらも調査を引き受けるが・・・。
『酔いどれに悪人なし』に続く“ジャク・テイラー”シリーズの第2作。
ケン・ブルーウンの、ぶつぎりの文章が独特の雰囲気は健在で、『酔いどれに悪人なし』を読んだ時はその文章構成にとまどいもあったが、2作目ともなると読む方も慣れるものでサクサクと読めた。
さて、一応私立探偵ものって事になってるが、ジャックの地道な調査により事件は解決・・・というようなミステリではないのがこのシリーズの特徴で、メインとなる事件が実はサブ的なもので、逆にサブ的ストーリーであるはずの日常を描いた部分がメインのようにさえ感じられるミステリ小説だ。
そして、ジャックが事件を解決させる手法というのがラストで描写される訳だが、前作に引き続きこれまた衝撃的だ。
この衝撃の度合いは、ジャック・テイラーという主人公がただのアル中でヤクに溺れるダメな男という訳ではなく、信義を重んじる今時稀有な男であるという事が、サブ的ストーリーである日常の様子が作中で描かれているので余計に強く感じるのであろう。
シリーズ3作目の邦訳が待ち遠しい。