- 著者:荻原 浩
- 『噂』 (新潮文庫)
香水の新ブランド「ミリエル」を売り出す為に取られた戦略は、渋谷の女子高生をモニターとしてスカウトし、「レインマンと呼ばれる者が出没し、女の子の足首を切っているが“ミリエル”を付けてる子は狙われない」などといった噂を流すもの。
狙い通り噂は都市伝説と化し、商品もヒットする。
しかし噂通りに足首を切られた少女の遺体が連続して発見される・・・。
テーマはサイコキラーであり、“噂”と“レインマン”の関係といった謎が物語のメインである。
しかし、陰惨な事件を扱っているが、元々がユーモア小説でデビューした著者だけに、妻に先立たれ娘と二人で暮らす所轄の刑事の親娘の会話、それにその相棒となるこちらも夫に先立たれ息子と二人暮しの警視庁の美人警部補とのやりとり、また渋谷に集まる今どきの女子高生とのやり取りなどが、実にユーモラスに描かれているせいで、事件から感じる陰惨さはそれほど感じずに済む。むしろ暖かみを文章の間から感じ取れるかも。
主人公である刑事も、娘との時間を少しでも増やそうと、元々は警視庁の刑事だったのを自ら所轄に移動を望み、今はまた制服組への移動を考えていたり、その相棒となる警視庁の女性警部補もキャリアでないにも関わらず若くして昇進している謎や女性ならではの視点で事件を見る様子など、それぞれの登場人物も魅力的であり、また感情移入もし易く実に読みやすい。
後半に入るまではそのせいもあってか割合とゆったりとした空気さえ感じられるが、いよいよレインマンの正体が明るみになってくる辺りは緊迫感もあり最後まで一気に読める。
そしてラスト一行。
この一行に込められた意味を理解した時、思わず「あぁ・・・!」と声を上げたくなるような衝撃を受ける事に・・・。
ところで帯に書かれた「衝撃のラスト一行に瞠目!」ってキャッチコピー、ちょっと強調し過ぎな気も。
読みながら、ラストはどんな衝撃が待ち受けているのかと気を取られてしまった(汗)。