- 著者:シャロン・クラム
- 『名声のレシピ』 (新潮文庫)
妻を親友に奪われた金融コラムニストで冴えない中年男のトム・ウェブスターは、1ヶ月で有名人になり、その顛末を手記にして雑誌に掲載してくれれば10万ドルの報酬を、というオファーを受ける。
最初は渋るトムも、出て行った妻を見返したい一心でオファーを受ける事に。
だが、どうしたら有名人になれるか。
考えた末にトムは人気女優のアレクサンドラに目的を明かした上で一度限りのデートを申し込む。
アレクサンドラ側にも思惑がありその申し出は快く受け入れられ、果たしてデートの翌日には各新聞紙の一面を飾る事になり、人気女優の熱愛の相手として一夜にしてトムは有名人となるが・・・。
メデイアとそれに踊らされる大衆を皮肉った痛快な物語。
とにかくいいのは各登場人物。
トムが有名になる事によってトムへの態度を変える者や変らぬ者。
それぞれがユーモラスに描かれている。
主人公のトムも面白い。
背も低く、そして中年太り。現代の女性より何百年も何千年も前の歴史上の女性に惹かれるような歴史オタク。
そして何の前触れもなく親友の元へ走った妻を今でも愛しており、その親友とは一緒に野球を観たりと変らぬ友情を育んでいる。
そんなちょっと複雑でありながらも愛すべきキャラクター。
そしてまた何よりセクシー女優として有名なアレクサンドラもキュートに描かれている。
顔や体も整形し、キャリアをアップさせる為ならどんな事も厭わない彼女。
ほんとなら好きなタイプの女性では無いはずだが妙に憎めないキャラクターで、こんな女性と一緒に暮らしたら、トムでなくてもクラクラしてしまうだろう(笑)。
トムとアレクサンドラが恋に陥ったりするような、ある意味陳腐なラブストーリーが展開するのか。
それともトムが陥った状況をブラックな笑いで読ませるのか・・・。
平凡な男が得た“名声”がもたらす栄誉や、それに伴う人々の妬みや嫉妬。
それらをユーモラスに、またテンポよく描かれた物語は、夢中になって読めること請け合いです。