- 著者:矢作 俊彦
- 『真夜中へもう一歩』 (角川文庫)
休暇中の神奈川県警捜査一課の二村永爾は、学術解剖用に提供されたが処理室から消えてしまったという医大生の屍体探しを依頼される。
二村は消えた屍体の生前の友人二人を訪れるが、その帰りに何者かに襲われる。
そして屍体を探す二村の前には新たな死体が。
混迷する事件を追う二村だが、消えた医大生の屍体は数日後、処理室に戻っていた・・・。
『リンゴォ・キッドの休日』 に続く“二村永爾”シリーズ2作目。
物語自体は、どこに話が転がっていくのかが前半読みにくいので、正直バランスが悪い部分もあるかも知れない。
だが、意外に単純とも言える真相が語られる部分までの持って行き方は、警察手帳を持たない休暇中のフリーの警官という立場をうまく使っていて格好いい。
ラストに判明する「真夜中へもう一歩」というタイトルの意味もまた実に格好いい。
とにかく「ハードボイルドを描く」という事を主体に置かれた物語。
痩せ我慢の美学。
軽妙でウイットにとみ、そして皮肉めいた強烈なユーモア。
映像がまぶたの裏に浮かび上がってくるような美しい比喩。
そしてその中で描かれる男の優しさが、読了後に清涼感めいたものを感じさせてくれる。
今回も著者が描くハードボイルドの世界を堪能させてもらった。
シリーズ3作目が文庫化されるのが待ち遠しいところだ。