- ロバート・B・パーカー
- 『失投』 (ハヤカワ文庫)
私立探偵のスペンサーは球団の極秘の依頼でレッド・ソックスのエース“マーティ・ラブ”が八百長をしているかどうかを調査する事に。
スペンサーは作家で野球の本を書く為の取材をしているという偽装をし、ラブに近づき話を聞く事に。
ラブの家でラブの妻リンダの話を聞くうちに、ちょっとした疑問を抱く。
そしてスペンサーの元には調査を止めろとマフィアが脅迫にきた・・・。
人気シリーズ“スペンサー”シリーズの3作目。
ハードボイルドが好きだと公言していながら、実はシリーズ1作目しか読んだことがなかった。
その1作目は、正直それほど面白いとは思わなかったが、この『失投』を読むと、一作目の『ゴッドウルフの行方』から比べると、全く別の印象を受けた。
なんといっても主人公であるスペンサーが生きているといった感じを受けた。
いわゆる肉体派である探偵で、それが必要であれば暴力を振るう事にためらいを見せない男で、毎日トレーニングも欠かさない。
だが、この事件で彼が取った暴力は、スペンサーにとって、また事件を解決するには、しょうがなかったと思いつつも、そのあと思い悩み、恋人のスーザンに癒しをもらう辺りは、単に暴力を肯定している男ではないと、共感めいたものを抱く。
また、依頼された事を単に遂行するのではなく、自分の倫理観に基づいて行動する辺りも面白い。
それは「正義」だけを求めている訳ではなく、自分自身が自分自身でいられるようにといったスペンサーにとっての「道徳」や「名誉」といったものを求めて生きているからかも知れない。