著者:泉優二
『チャンピオン・ライダー』 (角川文庫)
長いブランクからロードレースの世界に復帰した杉本敬。
事故や友の死を乗り越えて新しいシーズンを迎え、G・Pチャンピオンを目指してコンチネンタル・サーキットをまわる敬。
まわりの人間に助けられ、人間的にも成長した敬の前には若き天才ライダー、ケビンが立ち塞がる。
『ウィンディ(Ⅰ・Ⅱ)』(角川文庫)の続編。
G・Pに復帰し、まわりの人間を振り回しながら、ひたすらレースに打ち込んできた敬も、事故や友の死、それに娘、そして新たに出会った人達に助けられ、自分一人がレースをしてる訳でなく、また自分自身の為だけにレースをしている訳ではないと気付いた敬は、前作からは別人のように魅力的な人間になっている。
特にサムとジョークを飛ばし合う場面などは、前作からは考えられない部分だ。
今作を特徴付けているのは、個人のチームが主体だったレースから、チームやスポンサーがレースの世界を制する時代に移行しようとしている過渡期を描いている部分だろう。
今では、いわゆる第一レーサーを勝たせる為のチームオーダーは当たり前のように感じる部分もあるが、レーサーはそれぞれ勝つために走っているので、チームオーダーを言い渡された時に感じるジレンマにどう対処していくのかも注目。
当然G・Pの話なので、各レースシーンもライダー同士の駆け引き、マシントラブル、いろいろな要因がレースを左右する様を興味深く、また緊迫感を持って読める。
敬自身も自分のライディングに関して、ようやく自分の理想に近づく事が出来ると感じ、レースでは「信じられない世界」へ飛び込んでいく。
そしてもう一つ特徴付けているのは、過酷なレースを通じて感じあう人と人の繋がり合いや、家族愛が描かれている点もあげられるだろう。
レースの合間に語れる、各レース場を移動する間の旅の様子や、アットホームなパドックの様子は読んでて微笑ましくもある。
それだけに敬がチャンピオンを取れるようにと、敬のまわりに集まる人間と共に応援してしまうのだ。
そして迎えた最終戦、果たしてチャンピオンの栄誉は誰の手に?!
全てが終わった後、爽やかな感動の余韻を感じる事が出来るだろう。
そしてラストは思わず目から・・・。