- 著者: 栗本 薫
- タイトル: 『聖者の行進 -伊集院大介のクリスマス-』 (講談社)
かつては一世を風靡したと言ってもいいほどだったゲイクラブのママが、かつてそこで働いて、当時店でのナンバーワンだった“樹”の元に訪れる。
20年ぶりに再会した“ジョーママ”は、樹にかけがえのない青春を思い出させるが、店はかつての栄華の影も無く、ジョーママの周辺では不審な出来事が多く起こっていた。
伊集院大介は、ジョーママの話す事の裏に、犯罪の影を感じる。
名探偵・伊集院大介シリーズの新作。
クリスマスとは随分時期がずれてしまいましたが、ようやく読了。
既にこのシリーズはミステリーとは言えないような話が多くなってきていますが、この作品はその中でもミステリーとは最も言い難いものとなっています。
物語はレズバーを経営してる“樹”の一人称で進みます。
誰もが持つ大切な場所、それが時を経る事により、かつての輝きを失い、また失くなってしまう事に関する、切なさや哀しみを思い起こさせる物語で、例え死人が出てこようと、謎解きを楽しむようなものではありません。
栗本さんは、年々顕著になってきていますが、いろんな人間が持つ人生と感情を描く事を主とした作品を語ってくれます。
もちろん、昔の作品もそうでしたが、そこに本格的な謎解きがあったりと、別の楽しみを読者に与えてくえるエンターテナーでした。
しかし、最近の作品は、特に若い人にとっては、ついていくのが厳しいものになってるかも知れません。
特に今回のような「特殊な世界の住人」を描く時には、なんとも分かりづらい比喩が連発で、分かる人だけ分かればいいという感じも(笑)。
でも栗本さん・・・
「特殊な世界の住人」を描く時って、ほんと、筆が乗ってるって気がするな~(笑)。