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田原:自民党に対する国民の信頼感は地に落ちて、誰も安倍さんを信用していない。小沢さんはかつて2度、政権交代を勝ち取った。細川(護熙)連立政権と民主党政権のときです。いま、総裁選に向けて動きだした自民党の長老たちを口説いて、小沢さんは3度目のチャレンジをする気はないのか。政権奪取にはそれくらいやらないと。
小沢:「二度あることは三度ある」に期待したいけれども、彼らにその度胸はないんじゃないかな。
枝野:仮にその話があるとして今、自民党内で派閥のリーダーが派閥をしっかり握っているかというと疑問です。30人動かすのなら、個別に口説かないと動かない。今は自民党ですらそういう構造。自民党内でなかなか声が上がってこないのは、世論を受け止める力が弱くなっているから。先日、小沢先生と食事しながら話したんですが、安倍政権下の楽な選挙で勝ってきた若手の多くは、国民の多様な声に触れていない。
田原:安倍さんは、「国のため」とか「国民のため」とか、まったく思っていない。辞めたくないだけ。安倍内閣はどうすれば長持ちするか、これしか考えてない。
小沢:そのとおりです。そういう人なんです。そろそろ国会でけじめをつけなければならない。
田原:僕は、自民党の劣化があると思っている。昔は自民党内に反主流派があって、主流派との闘争が非常におもしろかった。ところが今や、自民党の議員たちはみんな安倍さんのイエスマン。そうなった責任の一つは小沢さんにあると思う。選挙制度を中選挙区制から小選挙区制に変えたからだ。公認されるためには執行部を敵に回せなくなった。
小沢:一つの政権政党と、それに対する別の政党があって、今の安倍さんみたいなおかしなことをすれば野党に取って代わられる。そういう緊張感あふれる政治ができるのが民主主義。政権交代がないのは民主主義ではないんです。その意味で、小選挙区制のほうが政権交代をやりやすい。小選挙区制だと1対1ですから、政治に緊張感を与え、国民が直接、政権を選択できる。
枝野:たしかに小選挙区制度では、公認権を持ってる執行部が強いという一面があります。ただ、小選挙区制では一騎打ちの構造にさえ持ち込めば、投票率が5㌽上がれば、あるいは投票する人の2%ぐらいが動けば、実は相当ひっくり返るんです。執行部も怖いかもしれないが、もっと怖いのは有権者、つまり選挙での当落です。「自分の選挙が危ない」という状況になれば、党内で声を上げざるを得なくなる。
田原:自民党の長老の一人、小泉(純一郎)元首相が週刊朝日のインタビュー(4月27日号)の中で原発ゼロを訴えているが、3月には立憲民主党、自由党含む野党4党が原発ゼロ基本法案を提出した。
枝野:次の参議院選挙の大きな争点にすべきではないかと思っています。うちは明確に原発ゼロに舵を切って旗を立てました。
田原:この間、「朝まで生テレビ!」で原発をテーマにしたが、自民党側は何にも意見がない。以前、茂木(敏充)さんや歴代の経産大臣に「原発どうする」って聞いたら、「原発のことは勘弁してください」と。
枝野:まあそうでしょうね。原発はすべて今井(尚哉)首相秘書官がここ10年くらいやっていました。原発をずっと推進してきたラインです。経産省は派閥がいくつにも分かれていて、性質としてどなたに聞いても違う主張をする。経産省には風力発電を推進してる部局もあって、その人たちは原発はやめてもらったほうがいいと本心から思っている。
田原:経産省も本当は、再生可能エネルギーが将来的にはいいと思っている。
枝野:そう思っている人は多いですよ。だからそういう意味では、原発エネルギー政策は安倍内閣が倒れることで大きく変わる余地が出てくると思います。かといって原発をやめる選択はできないでしょうが。自民党内には推進派もいないですが、どうやってやめるかも含めて、組み立てられる人はいないと思います。
田原:小泉さんは次の総裁選について、「原発ゼロは、河野太郎外相が俺より前に言っている。河野さんが出ればおもしろい」と言っていた。僕が可能性を感じるのは小泉進次郎さん。今、自民党の中でわりとはっきりと安倍批判をしている。でも、進次郎さんを動かすのは少し早いとも思う。石破(茂)さんがいいんじゃないか。岸田(文雄)さんは動かないと思う。
小沢:岸田君は宏池会だから、本来ならば筋通していればいい立場なんだけどね。
田原:古賀(誠)さんが何度か岸田さんに言ったけどダメだったみたい。
小沢:禅譲路線をとっているけど、安倍さんの禅譲って何すんだって。僕がよっぽど古賀君に会おうかと思ったくらい。いずれにしても、好きだの嫌いだの、過去の経緯がどうのと言っていたら大きなことはできないですよ。
田原:その小泉元首相は自民党の二階俊博幹事長、山崎拓元副総裁、小池百合子東京都知事らと18日の夜に会食して、安倍さんの政権運営、9月の総裁選について意見を交わしたと報じられた。
小沢:古賀君は山崎さんと昔、反目し合ってたんだけど、今は組めるかもしれませんね。竹下派長老の青木幹雄さんと山崎さんは仲がいいんじゃないかな。
田原:古賀さんは前の総裁選で野田聖子総務相を推したんですよ。そして、一時は(推薦人を)25人集めた。そしたら執行部が、野田氏の味方なんかしたら公認しないと、18人になっちゃった。
小沢:切り崩しして。野田君ね、因縁あるんだけど僕も。
田原:小沢さん、枝野さんは政権奪取を本気で考えている。
枝野:そりゃそうですよ。野党第1党が政権目指さなかったら、民主主義は成り立たないですし。
田原:希望の党の玉木(雄一郎)代表や民進党の大塚(耕平)代表が合併するって言ったけど、国民は誰も期待していない。支持率は合わせて2.8%ぐらいですよ。玉木さんと大塚さんが一緒になっても元の民進党になるだけだもんね。
枝野:それについてはコメントしません(笑)。
田原:やはり、国民は立憲の枝野さん、自由の小沢さんに期待してるんだ。
小沢:ありがとうございます。ここまで国民の不満と不信が出てきたら、安倍さんに引導を渡す必要があるかなという気がしてるんです。そのためには野党が結束して、多少荒っぽいことでもやらないと、メディアが報道しないんですよ。正論を言っていても、正論をなかなか報道しない。そういう意味で、そろそろ戦術的に何がいいかということの考え時だと思います。
(構成 本誌・秦正理)
※週刊朝日 2018年5月4-11日合併号より抜粋
田原:経産省も本当は、再生可能エネルギーが将来的にはいいと思っている。
枝野:そう思っている人は多いですよ。だからそういう意味では、原発エネルギー政策は安倍内閣が倒れることで大きく変わる余地が出てくると思います。かといって原発をやめる選択はできないでしょうが。自民党内には推進派もいないですが、どうやってやめるかも含めて、組み立てられる人はいないと思います。
田原:小泉さんは次の総裁選について、「原発ゼロは、河野太郎外相が俺より前に言っている。河野さんが出ればおもしろい」と言っていた。僕が可能性を感じるのは小泉進次郎さん。今、自民党の中でわりとはっきりと安倍批判をしている。でも、進次郎さんを動かすのは少し早いとも思う。石破(茂)さんがいいんじゃないか。岸田(文雄)さんは動かないと思う。
小沢:岸田君は宏池会だから、本来ならば筋通していればいい立場なんだけどね。
田原:古賀(誠)さんが何度か岸田さんに言ったけどダメだったみたい。
小沢:禅譲路線をとっているけど、安倍さんの禅譲って何すんだって。僕がよっぽど古賀君に会おうかと思ったくらい。いずれにしても、好きだの嫌いだの、過去の経緯がどうのと言っていたら大きなことはできないですよ。
田原:その小泉元首相は自民党の二階俊博幹事長、山崎拓元副総裁、小池百合子東京都知事らと18日の夜に会食して、安倍さんの政権運営、9月の総裁選について意見を交わしたと報じられた。
小沢:古賀君は山崎さんと昔、反目し合ってたんだけど、今は組めるかもしれませんね。竹下派長老の青木幹雄さんと山崎さんは仲がいいんじゃないかな。
田原:古賀さんは前の総裁選で野田聖子総務相を推したんですよ。そして、一時は(推薦人を)25人集めた。そしたら執行部が、野田氏の味方なんかしたら公認しないと、18人になっちゃった。
小沢:切り崩しして。野田君ね、因縁あるんだけど僕も。
田原:小沢さん、枝野さんは政権奪取を本気で考えている。
枝野:そりゃそうですよ。野党第1党が政権目指さなかったら、民主主義は成り立たないですし。
田原:希望の党の玉木(雄一郎)代表や民進党の大塚(耕平)代表が合併するって言ったけど、国民は誰も期待していない。支持率は合わせて2.8%ぐらいですよ。玉木さんと大塚さんが一緒になっても元の民進党になるだけだもんね。
枝野:それについてはコメントしません(笑)。
田原:やはり、国民は立憲の枝野さん、自由の小沢さんに期待してるんだ。
小沢:ありがとうございます。ここまで国民の不満と不信が出てきたら、安倍さんに引導を渡す必要があるかなという気がしてるんです。そのためには野党が結束して、多少荒っぽいことでもやらないと、メディアが報道しないんですよ。正論を言っていても、正論をなかなか報道しない。そういう意味で、そろそろ戦術的に何がいいかということの考え時だと思います。
(構成 本誌・秦正理)
※週刊朝日 2018年5月4-11日合併号より抜粋