第四章 内情
殻貝の宿についた頃には、日は完全に沈みきっていた。中に入ってみると 客は 一人もいなかった。
ちょっと意外だった。
「お帰りなさい。」
シェスカが温かく迎えてくれた。カウンターの向かい側では レイが料理をし始めた。
「客 一人もいないけど。」
「あっ、この国は 日が沈んで以降は 外出禁止なんです。」
「それも国が決めた方針。」
「はい、昔はそうじゃなかったみたいなんですが」
「あのさ、この国について 詳しくは 教えてくれないか? さっきまで 貴族屋敷にいたんだが
追い返されて。喧嘩になりかけたところをマナって少女が助けてくれたりしたんだが
言っちゃぁ 悪いが この国はおかしい。」
「はい、おっしゃるとおりです。この国は 六十年前から おかしくなってきているんです。」
「というと。」
「私も聞いた話なんですが
その昔 この国は 毎月 海の神に若い娘を生贄にささげなければならなかったんです。
でっ、そんな時 五人の魔術師が その海の神の力を五つの秘宝に封印したらしいんです。
それで この国は 平和になりました。
ですが 六十年前、王貴族と騎士団の連合軍がその五人の魔術師の末裔たちを
次々に虐殺したんです。ただ、一家だけ 虐殺をしなかった所が マナ家 なんです。
ただ、今では マナ家は 王貴族の配下の下 監視されていますが。
何故、マナ家を生かしているのかは わかりません。
でっ、現在に至っているんです。」
「ありがとう。最初の海の神の話って詳しく 分からない?」
「私もこれ以上、詳しくは 分からないんです。これ以上、詳しく知っている人といえば
年配の方くらいだと思います。」
「そうか、例えば。」
「潜水師とか。」
「潜水師?」
「この海域で 潜って海産物を取っている人です。」
「何処にいるの?」
「ここから大通りに出て 港まで直進して 右に曲がっていけば 海の民の家があります。
そこにいると思います。」
「ありがとう。」
話が一通り 終わった頃 ちょうどに 料理が出来た。
俺は またも 料理を貪り食った。今日のメニューは、 海草サラダと貝とイカのペペロンチーノだ。
とてもおいしかった。
「ご馳走様。」
「いや、いいよ。君は お客様だし。」
こんな親切な人に 俺が 侵入した魔術師だというのを隠しているのが辛い。
打ち明けたい。ただ、向こうの態度が変わるのが怖い。
その時、宿のドアにノックの音が響いた。