内容紹介より
「「どいつもこいつも、こけにしやがって」
「難儀だね、身内って奴から逃れられないものさ」、
追い詰められ女と男は危うい橋を渡ろうとする。
「あの場所の生まれでなければ」と呪い、
「死んどくれよ」と言葉の礫をぶつけながら、
その願いが叶いそうになると惑う。
ここに江戸八景の本物がある。「傑作」と呼ぶしかない短篇集。」
砂原浩太朗さんの武家ものの「高瀬庄左衛門御留書」の神山藩シリーズや「藩邸差配役日日控」などは、大好きで、追いかけてますが。
また違う引き出しをお持ちなのですね。
市井ものとはいっても、人情噺にならず、苦い終わり方をするお話も多いです。
余韻を持たせた終わり方だけど、この先は、地獄でしかないかもというような。
リアルな人間(江戸時代も現代も変わりない)を描かれていて一章ごとに、ほ~っと良い意味でのため息が出ました。
特に女性の描き方が、好きでした。
登場する女性たちは、決して友だちになりたいタイプでもなく、共感できるわけではないものの
当時生きていた女性は、心の内では、そう思っていたかもと思わせる、説得力がある。
流石です。