道路は、交通ネットワークの要として、人の移動や物資の輸送に欠かすことのできない基本的な社会資本であり、また、公共空間としても重要な役割を果たしている。近年、社会・経済情勢の変化、デジタル技術やモビリティ分野の進展により、道路に対するニーズが多様化し、こうしたニーズへの対応が課題となっている。
このような状況を踏まえて、道路に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)道路に対するニーズについて、技術者としての立場で多面的な観点から、近年の多様化している道路へのニーズを3つ抽出し。それぞれの観点を明記したうえで、そのニーズの内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した道路へのニーズのうち、最も重要と考えるニーズを1つ選択し、そのニーズに対する複数の対応策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての対応策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
■回答
1.道路に対するニーズ
(1)道路交通の低炭素化
社会・経済情勢の変化の観点から、2050年までに温室効果ガス排出量を2013年比で80%削減する目標が定められた。これについて、運輸部門におけるCO2排出量は2.1トン、17.9%、うち9割が自動車由来であり、CO2を多く排出していることが問題である。
このため、道路交通の低炭素化が道路へのニーズである。
(2)持続可能な物流システムの構築
デジタル技術の観点から、ロボット・ドローンによる配送技術、自動車の自動運転技術などが著しい発展を遂げている。
ドライバー不足や高齢化等により物流システムの持続性の不安に対し、これらのデジタル技術が期待されている。このため、持続可能な物流システムの構築が道路へのニーズである。
(3)マイカーなしでも便利に移動
モビリティ分野の進展の観点から、自動運転バス・タクシー、小型モビリティ、シェアサイクル等の多様な移動手段が普及し始めている。
一方で、これらのモビリティの道路上の利用環境は十分に整っておらず、今なおマイカーありきの道路環境となっている。このため、マイナーなしでも便利に移動できることが道路へのニーズである。
2.最重要ニーズと対応策
(1)最重要ニーズ
「道路交通の低炭素化」が最重要ニーズである。
理由は、効果が最も広範囲に得られる対応策であるためである。
(2)解決策
①安全で快適な自転車利用環境の整備
移動手段として、CO2を排出する自動車から、CO2を排出しない自転車の利用環境を整備する。
具体的には、シェアサイクルポート、駐輪場、自転車道ネットワーク等を整備し、安全で快適な自転車利用環境を整備する。
さらに、公共交通との連結性を高め、駅前等の適切な位置に、適切な規模・機能のシェアサイクルポートを設置することにより、移動手段の転換が効率的に図ることができる。
②低炭素公共交通システムの導入
燃料電池車など低炭素なシステムを採用したBRTの導入を推進する。
具体的には、BRT導入の構想や計画、整備、管理運営を関係機関と協力し、取り組む。
特に、都市計画マスタープランや立地適正化計画と整合性を図り、交通管理者などと連携して取り組むことで、地域の利便性向上にもつながる。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)新たに生じうるリスク
すべての対応策を実行したことにより、①自転車関連の事故の増大と、②BRT利用率の低下が新たに生じるリスクとして挙げられる。
(2)それへの対策
①自転車事故の増大への対策
自転車道の整備やシェアサイクルポートを整備することで、自転車の利用者が増加する。
しかし、左側(路側や自転車専用レーン)に車が一時停車していることで、自転車が車道中央まで出て自動車と接触すること等が考えられる。
このため、免許更新時等において、荷下ろし時等に自動車を停車させないよう、公安管理者と連携して、自動車のドライバーへの運転マナーを教育する。
②BRT利用率の低下への対策
せっかくBRTを導入しても、鉄道に比べて、定時性が低く、利用してもらえないリスクがある。
このため、BRTが一般道路の渋滞等に巻き込まれることによる遅延を回避し、定時性を高める必要がある。
具体策として、一般道路に優先レーンを設け、渋滞等を回避し、定時性を高める。 以上
■参考資料
https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf
■自己評価
この問題は本番では選択しませんでした。
上記回答は後日、書籍を読みながら作成したものです。
このテーマはきっと出るだろうと思い、事前に「2040年、道路の景色が変わる」を読んで、「持続可能な社会の姿」に、自分の得意な「政策の方向性 」を1つづつ選んで、問題、課題、解決策、リスク対応を整理していました。
ところが、問題文に「近年、社会・経済情勢の変化、デジタル技術やモビリティ分野の進展により、道路に対するニーズが多様化し、こうしたニーズへの対応が課題」と記載されており、この部分に対応した課題を挙げることが題意と判断しました。
社会・経済情報性の変化はコロナ渦か気候変動、デジタル技術はドローン系、モビリティは新たな移動手段だったかなぐらいなイメージまでで、問題分析できるほど、用意をしていませんでした。
そこで、この問題は選ばないことにしました。また、解決策が中長期の解決策になるので、リスク対応を考えるのも結構ハードルが高いように感じました。
テーマ自体は予想できても、ちゃんとそれぞれの施策の問題分析ができていないと結局本番で使えないなと感じました。