先週の土曜日、漫画版『アイアムアヒーロー』を全巻一気に購入。電子コミックの無料版でちまちま読んでいたのだが、一日一話しか読めず先が気になること、無料期間終了が迫っていることから、我慢できずに。
結論から言うと『アイアムアヒーロー』は、2020年私的ベスト読書アワードの1・2位を争う傑作だった。スケールが凄い、内容が凄い、登場人物の心理描写が凄い、絵が凄い、コマ割りが凄い、構図が凄い、エンディングが凄い、凄い凄い凄い凄い凄い凄い凄い凄い凄い!とにかくすべてが凄かった。凄まじかった。
ただのゾンビパニック漫画じゃない。人間とはなにか、「生きる」ということ、幸福とは。そういった根源的なテーマを掲げている。幕引きの手法も素晴らしい。賛否は分かれるとは思うが、哲学的である。感動した。
この傑作、映画化されている。アマゾンプライムで探したら、プライム会員特典で観られるという。読了後の週末、さっそく我が家の映画館(部屋)で上映した。
わかってる。コミックの実写化がいかに難しいかを。歴史の中で、どれだけの作品が批判を浴びてきたのかを。
特に『アイアムアヒーロー』は、物語もさることながら絵が素晴らしい。綿密な取材に基づくであろう緻密な線、病的なまで執拗に描かれた背景、髪の毛の先指先にまで満ち溢れる心理描写、まるで名作映画のようなカット割りなど。実写映画の存在は知っていたので、「これを再現するのは大変だったろうな」といらぬお世話を思いつつ「動く『アイアムアヒーロー』を観たい!」と胸をときめかせながら読んでいた。ことに私は、原作厨である。原作至上主義と言っても良い。甘いものは別腹、映画は別モノ、全22巻を2時間で再現できるはずはない。よく承知している。
だが、私は未熟だ。消え残る残り火のような、淡い期待が心のどこかにあったのだ。だから、少しそのあたりは割り引いて、以下感想をしたためたい。若干のネタバレも含め、どうぞお許しいただきたい。
実写版『アイアムアヒーロー』は、駄作どころか愚作である。はっきり言ってゴミだ。上映当時の漫画の帯文に「世界が絶賛」なる言葉が踊っていた。詐欺である。編集者とそれを許した編集長は、土下座して詫びるべきである。
監督は何を考えて、この作品を撮ったのか。漫画版に感銘受けて映画化を試みたのではなかったのか。その思いはまったく伝わってこない。
うらぶれた漫画家がヒーローになるところ?
新しいゾンビパニック映画の可能性?
人間の本質を問う哲学的なところ?
まるで絵画のような、名作映画のような描画を再現したかった?
まったくわからない。うすっぺらだ。原作の一般受けしそうな部分だけ拾い上げ、下手くそなパッチワークでつぎはぎし、英雄と顔が激似の大泉洋(後半天パを隠しきれず素の大泉に戻った)、鉄板人気女優の有村架純と長澤まさみを起用してとりあえずマスコミとスポンサーにアピール。登場人物の設定(てっこー!)や心理描写がまったくないから、ただただゾンビが襲ってくるだけの映画。既存のゾンビ映画を1ミリも超えていない。銃をバンバン撃ってゾンビを倒すなんてなんの工夫もない。有村架純がゾンビ化したのに他のゾンビのようにならない設定がまったく意味をなしていない。この映画では混乱するだけ。
挙句の果てにゾンビを駆逐したクライマックス、有村が大泉をキラキラお目々で見ながら「ヒーロー……」とつぶやく。はぁ? なーんじゃそりゃ? うっす。うすうす。ギガうす。薄すぎるぎるぎる。原作はそんなもんじゃないわ。
なんの意図も意志も感じられない映画。観客を馬鹿にしてるよね。どこに絶賛される要素があるの? 「このヒットの最大の要因には、人気キャストによるエンタメライト層へのアプローチに成功していること。過激な映像描写への驚きとともに、それを映し出す理由があるメッセージ性のある人間ドラマがしっかりと描かれているところ」だって。どこにそんなものがあったんだ? いいかげんにしろ!
(参考)
“ゾンビ映画はヒットしない”定説を覆す? 『アイアムアヒーロー』異例ヒット
https://www.oricon.co.jp/special/48941/
この映画のファンの方には申し訳ありません。ちょっと興奮してしまいました。映画を観た方が落胆して、原作までたどり着かないどころか酷評されたのではないかと考えたら……。原作厨の私、ただただ悲しかったのだ。
この記事で伝えたかったことは、原作を読んでくださいということ。そうすれば、あなたは至福の時間を得ることができるだろう。映画を観る前に、あるいは観たあとに。ぜひ。
原作厨、めんどくさくてどうもすみません(^^ゞ