製作も設定も30年以上前とレトロ感は否めないが、さすがの巨匠たち、人間の苦悩と悲劇をしっかり描いている。
主人公は交通事故により、触れた相手の過去や未来を見ることができるという、能力に目覚める。能力を使い事件を解決したり、事故を未然に防ぐのだが、世間からは怪物扱い、また自分の無力を思い知らされ、心身ともに社会から孤立していく。そして、世界を揺るがす大きな事件を予知してしまう……。
いまとなっては目新しい題材ではないかもしれないが、舞台をアメリカの地方都市に限定し、最後まで大それた事件に頼らないキング流の濃縮されたストーリーテリングは、さすがのひとこと。
さらに、主演のクリストファー・ウォーケンの暗く切ない演技は、この作品の悲劇性をぐっと引き上げている。
そして、クローネンバーグの手により演出された、作品全体を通した翳がホラー・サスペンス・人間ドラマを、完璧に融合させた。
とかく、チープな娯楽作品として(それでも私は好きだが)取り上げられがちなキング原作映画だが、この作品は高い評価を得ておりいくつかの賞を獲得している。
キングとクローネンバーグを語る上では、見逃してはならない作品ではないだろうか。