新海誠はリアリティの求道者 | そうでもなくない?

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映画『言の葉の庭』を観た。

新海作品はこれで4作目。

最初は『君の名は。』

気に入った、または気になった作家の作品はまとめて鑑賞する主義。

 

 

さて感想。

タイトルの通り、新海誠はリアリティの求道者と感じた。

 

まずは風景。ビデオの特典で語っていたが、着色にめちゃめちゃこだわってる。

自然の環境光を意識して、あえて肌に葉の反射の緑を入れたり、

人物の輪郭の光にこだわったり。

玉ぼけもバブルぼけだったりして、

アニメとは思えないリアリティを産み出している。

新海監督いわく「新しい手法を発明した」。

 

音もそう。

風の音や鳥のさえずり、雨の音。雷鳴。

完全に本物。

自分が新宿御苑にいるんじゃないかと錯覚を起こす。

実は今朝、近所の里山に写真を撮りに行った。

その場所で、この映画に流れているものと同じ自然の音を聴いた。

いま、この映画をイヤホンで聴いている。

四十雀の鳴き声、テレビから聴こえているのか、

実際にわが家の庭で鳴いている声なのか。

イヤホンをはずして確認した。

 

そして、それらすべてがただただ、美しい。

 

風景だけではない。

人の心を突き詰めて、

とことん追い込んで、

観るものが気づいていない心の底にあるリアリティを突き付ける。

だから、脳でなく心がダイレクトに反応してしまう。

とどのつまりは号泣。

共感、なんてまどろっこしいものは必要なくて、

訳もわからずただ涙があふれてくる。

 

人は誰でも、多かれ少なかれ、なにかを抱えている。

そのなにかは、観ている者の人生に登場しないことがほとんど。

だから本当の意味で、登場人物への思い入れは難しいと思う。

ふつう、そんなに共感力はない。

でもそんなものは必要なくて、

監督は登場人物の内面をじわじわと観るものの心に染み込ませて、

最後にそれを一気に放出する。そ

れが観るものの心を撃つ。

きれいなだけじゃない。

ただの恋物語じゃない。

新海誠は人生をまるごと表現して、感動を贈ってくれる。