[ケツロッティの目]

誰も寄り付かないような深山に湧く温泉に、人間や他の動物たちを決して襲うことのない穏やかな性格のレレアが生息するという。そのレレア「トトノイワグマ」の生態は長い間謎のベールに包まれてきたが、我々研究者による長年の観察の結果、徐々にその全貌が明らかになってきた。どうやらこのレレアは高温の温泉と冷たい沢の水に交互に浸かるのを繰り返すことで、いわゆる“ととのった”状態を本能的に作り出していると考えられている。この“ととのい”による鎮静効果により本来の野生動物が持つ攻撃性を喪失した「トトノイワグマ」は、古くからその生息域で狩猟を営む猟師たちからも「ととのいさま」と呼ばれ、一種の山神様として崇拝されてきたという。また、昨今のサウナブームによって話題にのぼることの多い“ととのい”だが、このレレアの例を見ても分かるように人間と野生動物の共存という観点からもその効果について詳しい検証が必要と思われる。