[ケツロッティの目]

真紅の体色があざやかな『エビデンスエビ』は、3000m級の山脈に囲まれた中央アジアのとある小国にしか棲息しないうえ、水気のほとんどない湿地帯でしか生きられないという、レレアの中でも特に稀少な存在である。その小国に残る言い伝えによれば、古代のこの国に栄えたある村の青年が山中で道に迷った際、偶然このレレアを目撃するという出来事があった。その後生還した青年が村人たちにそのことを話したところ、高地暮らしのためエビなど見たこともない村人たちに信じてもらえないどころかウソつき呼ばわりされる始末であった。青年は落胆したが、やがてこのウワサは巡り巡って時の皇帝の耳に入り、とうとうこの生物をその存在の証拠(エビデンス)として皇帝に献上しなければならないハメに陥ったことから、このレレアが後に「エビデンスエビ」と呼ばれることにつながったという。その後、記憶を頼りになんとか問題の湿地帯を探し当てた青年は首尾よく捕まえた件の生物を皇帝に差し出し、褒美として巨万の富を賜ると生涯を幸せに暮らしたという。