これを読んでしまったら、今年はもう何を読んでも
ココまでの気持ちにならない気が。
「神々の山嶺 上下」 夢枕獏著
内容(「BOOK」データベースより)
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを
手に入れる。
そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に
成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性
を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と
邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。
羽生がカトマンドゥで目指すものは?
柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
内容(「BOOK」データベースより)
その男、羽生丈二。伝説の単独登攀者にして、
死なせたパートナーへの罪障感に苦しむ男。
羽生が目指しているのは、前人未到のエヴェレスト
南西壁冬期無酸素単独登頂だった。
生物の生存を許さぬ8000メートルを越える高所での
吐息も凍る登攀が開始される。
人はなぜ、山に攀るのか?永遠のテーマに、いま答えが
提示される。
柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
18年前の本なので、当時の反響は知らないのだけど
(ちょうど本を全く読まなかった時期と思う)
あの柴田錬三郎賞を獲っているくらいだから、絶賛だったに
違いない。
だから今さらだけど、ワタシの中では
今年一番の本だ!
エヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登頂って、バンバンバン
親のハネマンみたいな・・・いやいや違うって
これをやったヤツはだれもいない。
誰よりも先に成功させたいって途方もない奴の話。
エヴェレスト登頂って言ったら、ワタシら小さい頃は
それこそ大イヴェント。日本人初登頂、女性初登頂(日本人
田部井淳子さん)、頂上からライブTV中継などなど、
大騒ぎであった。
今では登頂するのに渋滞ができるほどポピュラーみたいだが
最後に残った
「南西壁冬季無酸素単独登頂」
だれも成功してない。これをめぐって男の野心が燃える。
作者も何回もエヴェレストに行っているだけあって、
登山のシーンや何故難しいのかがとても分かりやすく
思わず登山への関心も高まる。
登山を成功させて、名誉や名声を求める人と、
やむにやまれぬ自分の気持ちから登攀すること
のみを求める人がいるという事も。
主人公・羽生丈二はまさにその後者だ。
誰よりも先にそこに到達する。成功しても誰にも知られ
なくてもいい。そのために不要なものはすべて捨てる。
エヴェレストにくすぶる気持ちを持てあます深町は
そんな羽生に魅かれ彼を追う。
カッコいいじゃない。・・・でも奴らにはそんな賞賛も
いらないんだよね。
沢木耕太郎の「凍」に出てくる登山家夫妻も多分そうだ。
ひりつくような危険な登攀への渇望のみが彼らを生かす。
凍傷で指がなくなっても、そんなことはちょこっとだけ登山が
不自由になるだけ。生きてる限り登る!
そんなものに出会えた人たちは、すごく幸せなんじゃないかと思う。
エベレスト初登頂のミステリーから始まった物語は中盤、
冒険活劇の様相を呈し、後半は圧巻の登攀シーン。
大長編だが、最後まで完全燃焼間違いなし!
ワタシまでエヴェレストを目指したくなった。←ムリ!