う~ん、やっぱり日本篇の方が面白かった。
「書物愛 日本篇」
紀田順一郎編集
古書の価値を言われてわかるほどではないにしろ
海外篇よりは、書名や作者を聞いて相当価値がある
位の事はなんとなくわかるので。
芥川賞を取りそうな単行本の初版を確保しようと
暗躍する男たちを描いた「嗤い声」
発表の前に書店で見つけ、分かり辛い棚に移動
させたり、他の本の下に隠したり。
はたから見ると大笑いだが、本人たちは大真面目。
見つけるのに大変苦労した本でも、発表までは
絶対に買わないのがミソ。真剣にやってるゲーム
みたいなものなのかなぁ。
夢野久作のアヤシイ作品「悪魔祈祷書」。
聖書と見せて実は悪魔の本?ヒトの悪そうな
古書店主の思惑とは?
なるほどなるほど
普段はなかなかお目にかかれない、めずらしい作品
ばかり。なかでも、由起しげ子という人の書いた
「本の話」は第1回の芥川賞作品で、本当に入手は
難しいらしい。ココで読めるなんてシアワセ
無き義兄の残した専門書を姉の入院代と生活の為、
処分しなければならないつらさを描いた作品。
哀愁が漂う・・
かと思うと、大スター・宮部みゆきの「歪んだ鏡」の
思いもよらない展開のあざやかさ。
なさそでありそで・・ロマンだねえ。しかし現実は
キビシイ。
編者・紀田氏の「展覧会の客」のようなリアルな
古書界の裏側も、怖くなるような古書への執念も
「へー!」と驚くばかりである。
こうやってアンソロジーにしてもらうと、一生読まずに
終わってしまうような作品に出会えるから面白い。
ワタシは「古書狩り」が良かったなあ。
なんの変哲もない戦前の本を何冊も集める老人。
気になって調べたら、そこには意外な事実と
魅力的な美女との出会いが!
かび臭くて埃っぽいカンジの話の中で、この作品だけ
ちょっとサワヤカな風が吹いた気がした。
久しぶりに神田に行きたくなってきた。サンダーバードカフェもあるし(笑)