千葉君に会えるってんで、そりゃあもう村は大騒ぎさ~
・・・と、冗談はさておき大盛り上がりのらーら。
「死神の浮力」 伊坂幸太郎著
予告通り、てか予約通り(笑)海賊の後には
死神の千葉君がやってきた。
何百番台って図書館予約待ちだったけど、思ったより
早かったので、他の本に押され気味の中やっと読了
「死神の精度」は短編集だったけど、今度は書き下ろしの
長編。その分、キレは悪いような気がするけど、感動は
じんわりと重い。
サイコパスに娘を殺された夫婦が、犯人本城に復讐する物語。
千葉は今回、夫の山野辺の担当となっている。
死亡フラグのたった人間に寄り添い、その死が適正か
不可かを判断するのが仕事。
判断基準たって、死神の好み?で決めてしまえる、大変
ゆるいっちゃゆるいもので、ほとんどが可。つまり死ぬ
死神仲間には、たいして調査もせず「可」としてしまう
怠け者も多い。
千葉は仕事はきちんとやらなければ気が済まず、彼らの
かたき討ちに付き合うことになる。
山野辺は作家で、千葉の調査期間中、自らの生き方や
人間の生き死になど、その父親との確執を含め
古今東西の哲学者の言葉を引用して、考察する。
それに対する千葉の天然ぶりが絶妙なボケとなって
つらい話におかしみを与える。
言ってみれば、この天然、安堂ロイドみたいなもの
ただ、ロイドが純粋に人間の感情を学習していく
(インストール?)に対して、千葉の場合、
一見感情がないように見えるが、友情とか愛情とか
とは違う次元で、規範意識みたいなのを基準に
行動している。だから、むしろ公正で、善とか悪とか
言う前に彼なりの倫理で判断しているのが好感が
もてるのだ。
千葉は、山野辺夫婦に寄り添いながら、しかし決して
積極的に手を貸すのでもなく、また本城に見方をする
事もなく。結末に向かう。
彼の能力を使えば容易に出来てしまう仇討だが、
あえてマジックなど使わず、知恵を出し合い、考えさせ
、寛容と不寛容の間で揺れながらも、よりベストな
オワリへと流れ込んで行く。
マリアビートルに比べたら、あそこまでの無情感はないが、
親が子の敵を討つとか、サイコパス(王子)が登場する
ところとか共通するところが多い。
日頃、子を持つ親として、自分の子供が理不尽な形で
命を奪われたら・・・なんて考えることもあるのだろうな。
物語は運命(死神の組織?)のいたずらで、なんと
労せずとも(いや、労した?)オソロシイ結末を用意していた。
今回も律儀な千葉の仕事ぶりに感動。
ついでに言っちゃえば、映画で金城サマの千葉クンが
帰ってこないかな?
実はそれが一番の読後の感想だったりして
分けるのも変だけど、理系の人の文章って好きみたい。