胡蝶の夢か、はたまた夢応の鯉魚か
「夢違(ゆめちがい)」恩田陸著。
今年の直木賞候補作だね。選ばれなかったけど、恩田節は
健在ダ
読み始めたとたんに、恩田ワールドにからめとられてしまう
今回は、 夢と 霧と 満開の桜
夢のシーンでは思わずサイレントヒルの世界を歩いているような
不安な気持ちになる。
胡蝶になった夢か、それとも今が胡蝶の見ている夢なのか
夢と現実はしばしば入れ替わり、区別がつかなくなる。
多くの謎は解かれないまま終わる
夢に現れたと思った彼女は、本当は生霊であって夢ではない
六条の御息所みたいに・・・、もの凄い執着。
それほどまでに、彼女が切望したのは夢を変える事。
一体どんな恐ろしい夢を見てしまったのか。
恩田陸の作品は、現実の世界に見えてちょっとずつ歪んだ世界が
広がっている。「常野物語」や「3月は深き紅の淵を」から続くシリーズ
あるいは「木曜組曲」「中庭の出来事」。
物語の底には、いつも悪意が流れている。
いつの間にか、その中に取り込まれ、登場人物と共に読者も
さまよい歩くのだ。
そして答えのないまま取り残されて終わる。
今回の満開の桜は、確かにこわい