相変わらずの、部屋の汚さ。
物は乱雑に置かれ、部屋の主も場所がわからない気がする。
それだけ、私の主人は集中してるのだろう。
「…マスター、少しは休んでください。」
これも、無駄な声かけに過ぎない。
だけど、作業は順調な様で。
もう半日もすれば、キリが良くなる。
そんな感じの、部屋の汚さ。
部屋の汚さは、長年仕えたからなんとなくわかるようになった。
今の様に、ごちゃごちゃした汚さなら、順調で折り返しは過ぎてる。
片隅だけ汚いのなら、上手くいってない。
中央だけなら頓挫して諦めかけてる。
主人の部屋を出て、私は別の仕事をする。
メインは主人の世話係。
なので、食事の支度をしよう。
支度を終えた頃、主人の声が廊下にまで聞こえた。
それを確認し、主人の部屋に入る。
「お疲れさまでした、マスター。」
主人は苦笑いを浮かべてこちらを見る。
部屋の惨状に、今気付いたのだろう。
いつもの事なのに。
「お食事、出来てます。皆も待ってるので、行きましょう。」
そう告げると、主人は私の頭を撫でる。
『ありがとう。』
世話係の特権も悪くない。
とは言え、主人は皆に同じ様にスキンシップをする。
いつ、主人と離れるか誰もわからないのだから。
『また1人、増えると思うからよろしく。』
「わかりました。」
また1人、私の妹の様なモノが出来るようだ。
見えない筈の、右目が痛む。
「失敗は、しないで下さいね。」
『善処するさ。』
私は右目が無い状態で、主人の力で生み出された。
私の姉の様な存在は、居たが、今はもう居ない。
いつか、私も主人の元から離れるだろう。
この屋敷には、主人だけが普通の人。
私達は、主人に造られた人の様で人ではないモノ。
だから皆、何かしら違う。
目の無いモノ。
腕の無いモノ。
足の無いモノ。
逆に、人よりなにかが多いモノ。
それらが住む、この屋敷。
きっと、次は私が消える番。
主人は私の最期の時に、どんな顔をするのだろうか。
主人との別れは近い。
なんとなく、そう感じた。