「…お帰り。」
私はコイツが好きじゃない。
なんだかんだ触ってくるし、ちょっかいかけてくるし…うざい。
「悪かったわね。お姉様は少し出てるわ。」
きょろきょろと探してるみたいだから言う。
意外とがっかりした感じはしてない。
だからといって、何故こっちにコイツは来る。
「やめなさい。…こら、触るな。」
近付いてきて、私の頭に手を置いて撫でる。
その気になれば手を払えるし、お姉様が居ない今なら多少手荒にしても大丈夫だと思う。
手を払うのはコイツには効かない。
というより、それにめげずに触れてくる。頭おかしい。
暫くして、ようやくコイツは撫でるのをやめた。
ようやく終わったのも束の間。
今度は色々と話しかけてくる。
好きだとか、何を言ってるんだ。
何度もこちらは拒否しているのに。
まぁ、お姉様にそういう事を言うよりはマシだけども。
いや、やっぱ嫌だ。
「…なら、誠意を見せなさい。そんなに私が好きなら、言葉だけでは納得できないわ。」
そんな度胸も無い癖に。
言葉だけの癖に。
そう思ったのが誤算だった。
「…え?ちょっと、顔が近…っ!?」
コイツは私を抱き寄せるばかりか、唇を重ねてきた。
頭のなかは物凄くぐるぐるとしているけど、身体は全く動かない。
暫くして離れたけど、それまでが物凄く長く感じた。
「はっ…え、あ…な……はぁ!?あ、アンタ何してんのよ!!」
混乱して言葉もなかなかまとまらない。
確かに言葉だけでは信じないとは言ったけど…言ったけど!
だからって!
「バカじゃないの!?」
これだから人間は!
明らかにやり過ぎたと思ったのか、必死に謝ってくる。
けど、流石に許す事が出来ない。
お姉様が居ない今、コイツを………
『…ダメですよ?』
背筋が凍る。嫌いなアイツの声。
苦手なアイツがいつの間にか居た。
『彼には私がなんとかしておくので、今日は…』
「わ、わかったわ…。」
アイツに任せてさっさとその場を離れる。
確かに、行動で示してきた事には感心した。
…何故、私はそう思った。
嫌いな奴の筈なのに。
気の迷いのはずだ。
でも、この気持ちはなんだろう。
次に会った時、聞いてみようか。
何で、邪険に扱ってるのに私に好きだと言ってくるのか。
好きだとか本気なのだろうか。
考えれば考えるほど、人間の考えはわからない。
コイツは特に異端過ぎる。
あえて、イメージ的には相性がよくなさそうのHさんとKさん(アイツ役)で。
多分、よくない波動を感じて止めに来たんだと思う。