失踪 | らきあの自由帳

らきあの自由帳

伺かとSS的な何かとマイナス思考と適当なところ















空から降ってくる白いモノ

それはやがて地面を覆い

辺り一面、真っ白になる

珍しい光景

この光景を見て、私は嫌でも思い出す

あの日も、こんな銀世界だった


兄が私の前から姿を消したのは


理由はわかってる

私達は互いに愛しすぎたから

兄妹同士で愛し合った

兄が居なくなる前日、兄は私に言った


「このままじゃ、2人とも不幸になってしまう。」


その時は意味がわからなかった

そして翌日、兄は姿を消した

母親は知ってるが言えない、と

私は泣いた

兄の存在が、それほど私の中で大きかった


兄を忘れる日は無かった

私は成人し、社会に出た

けど、男を作る事は無い

仕事に打ち込み、必死だったから

そんなある日、父親が亡くなり

続けざまに母親も倒れた

母親を看病する日々

その母親が、兄の事を話し始めた


兄は両親の子ではない事
私は両親の子である事

兄と私が、結ばれる事が可能だという事

それを隠しておいて欲しいと兄に口止めされていた事


嬉しいようで、複雑な気持ちが頭を巡る

そして、久々に兄の事が頭いっぱいになる

母親は、それから少しして亡くなった

兄は来なかった

待っても帰ってこない



辺り一面、真っ白な世界は
兄が居なくなった日を思い出す

今、何をしているのだろう

玄関から外を眺めていると
人影がこちらに歩いてきた

来客かな、そう思った

その人影は、私に気付いて踵を返そうとした


「待って!」


声が出ていた

その人の顔を見たわけじゃない

けど、私は思っていた

靴を履き、外にでる

その人は止まったまま

私は駆け寄り、その人を見る


「…どこ、行ってたんですか。」


顔は変わったけれど、見間違う筈がない

あの日居なくなった兄が、今目の前に居る


「悪い。」

「…バカ。バカバカバカ!」


兄の胸を叩く

自然と涙が零れ落ち
兄の胸に頭を預ける

兄はそんな私を優しく抱き締めた

私はわんわんと泣き出してしまう


兄は居なくなったあの日
その時と同じような日に帰ってきた