30章 | らきあの自由帳

らきあの自由帳

伺かとSS的な何かとマイナス思考と適当なところ

※前回の続き














司に身体を揺すられ、かなたは目を覚ます。


「大丈夫?」
「はい。未來ちゃん…一旦、戻るね。」


かなたは潤の手をゆっくりと戻すと、未來に微笑みかけて病室を司に押されて出て行く。
司の手によって、きた道を戻り、ベッドへと再び寝転がる。


「司さん。少し眠いから寝ますね。」
「うん。じゃあ、また。」


司が部屋を出て行くのを、かなたはじっと見守る。
司が視界から消えると、かなたは直ぐに眠りに就いた。


かなたが目を覚ますと、辺りは真っ暗になっていた。時計を見ると、深夜を回っている。
かなたは、天井を見上げる。


「人を信じれない…か。」


はぁ、と溜め息を吐く。
潤の言った言葉を思い出せば出すほど、過去の自分が重なって見えてしまう。


かなたの特殊な力は、周りには信じれないモノだった。
それも、かなたは子供の時から持っている。

子供は、自分とは違った人を嫌う傾向にある。
特に、かなたのような周りから見たら嘘にしか聞こえない事を言われるのを嫌う。

当然、かなたは独りになる事が多くなり、かなた自身も人を嫌う傾向になる。
やがて、かなたから人を避け、話さなくなり、表情の変化も乏しくなる。


「……いけないいけない。今はそんな事考えてる場合じゃないや。」


そんな苦い思い出を、思い返していた。かなたにとって、その思い出は辛く悲しい物でもある。
だが、そんな事があったから今がある。
振り払うかのように頭を振り、頬を叩いて意識をはっきりとさせる。

かなたは、まだ自分の思い通りには動かない身体を無理矢理動かし、よろめきながらも車椅子に座った。
そしてゆっくりと、病室から出て行く。





司に案内される時よりも、時間を掛けて潤の病室へと入る。
機械の規則正しい音と、淡い光が点いているベッドへと向かう。


そこには、司と来た時と同じ場所に未來が座っていた。
未來は潤の手をしっかりと握り、疲労からか眠っている。

かなたは未來に毛布をかけると、反対側に移動した。潤の様子を見るが、変化はないようだ。
潤の手を握る。そこで、かなたは異変に気付いた。

潤は言うなれば今は半身を失っている状態。そして、今そこに別の何かが入り込んでいる。
今は半身の上に疲労も多い。そこに異物が入れば最悪、潤の意識が乗っ取られる。

潤の身体ではあるが、潤の意識ではない者になってしまう。
かなたは意識を集中させ、再び潤の意識へと入り込む。




以前とは違う構造を見ると、潤の意識は変わった事が伺える。
かなたは走って潤を探す。兎に角、潤を感じるその方向へと。

開けた場所に入り、かなたは潤を見つけた。潤に駆け寄る。


「潤君!大丈夫?」


呼び掛けるも反応が無い。
何かが自分を見ている気配を感じ、かなたは辺りを警戒する。

警戒しながら、潤の様子を見る。反応は無いが、潤の意識体があるイコール、まだ完全には飲み込まれてない証拠となる。

その時、かなたの足下から腕が2本現れ、かなたの両足を掴む。
かなたは解こうとするが、力が強く歯が立たない。それどころか、足が破壊されそうな力で掴まれ、痛みで解こうとする事が出来ない。

かなたの前方に何かの気配を感じ、そちらを見る。人の形をした何かが、ゆっくりとかなたに近寄ってくる。
よく見ると、手が無い。手だけでなく、顔の形はあるがまっさらでパーツが1つも無い。

足の痛みが鈍くなり、感覚が麻痺し始めてきた時、かなたの足を掴んでいた手が掴むのを止めた。
そして、かなたの対面している人の形をしたモノに手が戻るように吸い寄せられる。

かなたはその場に崩れた。足の感覚があまり感じれず、立つ力が出ない。
人の形をしたモノは、かなたの顔を覗き込むように顔を近付ける。先程までまっさらだった顔が、今では遥と瓜二つになっていた。














この辺で〆
ちょっと長いなぁと思ったんで区切りを付けた。