※FF11的な何か
※前回の続き
2人が互いを少し理解した翌日、ウィンダスは雨が降っていた。
キサラは窓に軽く手を触れながら、外を見ている。
「……雨、止まないね。」
ふぅと吐く息で、窓が息の当たる場所だけ一時的に曇る。
「今日は1日中、雨みたいだよ。」
椅子に座り、小さめな貝殻に耳をあてがいながらウルが言う。
この貝殻、「リンクシェル」は魔法を込められた貝殻で、遠方の人との会話も出来る。
ウルが持っているのは「ウェザーリンクシェル」と言い、今居る地方の天気を教えてくれる配布された物。キサラも持ってはいるが、殆ど使ってはいない。
「…雨じゃ何処にも行けないね。」
「そうだね…。」
窓に伝う雨を目で追い呟くキサラ。ウルはリンクシェルをしまい、大きな欠伸をする。
「……何だか眠いし、もう少し寝るね。」
ウルはベッドに倒れ込み、直ぐに寝息をたてる。
キサラは先程まで座っていたウルの椅子に座り、人形を取り出して調整を始めた。
動きを確かめ、少し違和感が出れば修正し、再度動きを確かめる。そうして、違和感も無くなった所で人形をしまった。
「…寝よ。」
ぼそっと言うと、キサラはウルの寝ているベッドに入り込み、眠りに就いた。
「ん……何…っ!?」
ウルが何か違和感を覚えて目を開けると、目の前でキサラが寝ていた。ウルの前にはキサラの寝顔。
「やっぱり、似てるなぁ…」
キサラの寝顔をじっと見るウル。ウルの目には、キサラの寝顔とミラの寝顔が重なって見えた。
だが、いくら似ても似て非なる所はあった。
「相変わらず……どうしたらこうなるんだろうか…。」
キサラの寝相は悪いと言うより、何故か寝ている間に服が脱げていくという事が多く、今回はズボンが膝まで下りていて下着が丸見えだった。
ウルは布団をかけてそれらを隠すと、部屋から出た。
「女将さん、ララブのしっぽ漬けあります?」
ウルは宿屋の女将であるタルタルのチャママを見つけて話し掛ける。
「ごめんね、今切らしてるのよ。」
「そっかー…残念。じゃあピピラの塩焼き2つ下さい。」
「はい、ちょっと待っててねー。」
チャママは奥の方へ行き、数分経つと焼きたてのピピラの塩焼きを皿に2尾載せて持ってきた。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
ウルは皿を受け取り、部屋に戻ろうとすると、冒険者と見られるミスラがチャママの方にやってきた。
「ほら、今度こそ持ってきたよ!」
ミスラは鞄から円い石を出してチャママに手渡した。
チャママは難しい顔をして重さや形を吟味している。
「うーん………ダメね!やりなおし!!」
「そんなぁ…」
チャママの眼鏡に持ってきた円石は適わなかったのか、やり直しを命じられ落胆するミスラ。
「…冒険者も大変だなぁ。」
チャママとミスラのやり取りを聞きながら、部屋へと戻るウル。
部屋へ戻ると、キサラはまだ寝ていた。机にお皿を置き、自分も椅子に座る。
そのまま、1尾を手に取り口に運ぶ。硬めの肉質だがしっかりとしており、塩が魚の臭みを消して美味しく仕上がっている。
この宿屋、「ララブのしっぽ亭」は近くに調理ギルドがある。調理を志す者が通う専門所と言う位置付けだが、調理を極めた者も訪れる場所でもある。
調理ギルドに近い「ララブのしっぽ亭」及び「音楽の森レストラン」は調理ギルドから料理や食材を仕入れている為、味は確かである。
ピピラは小骨が多い為、身を食べつつ小骨を探して取る作業が繰り返される。そうやって、ウルは1尾を食べ終えた。
「んぅ……ふぁぁ…。」
そのタイミングで、キサラが目を覚ます。ベッドから身体を起こし、両腕を上げ伸びをする。
「おはよ。」
「…おはよー。……なんか良い匂いする。」
寝ぼけ眼をこすりつつ、鼻を利かせて匂いの元を探す。
「ピピラの塩焼きあるけど、食べる?」
「うん。食べるー。」
ミスラは肉よりも魚を好む種族であり、キサラも例外ではない。キサラは上機嫌で布団をどかして立ち上がる。
「ちょ……キサラ、ズボン脱げてる…」
ウルは顔を背けて、キサラに言う。キサラの下半身は下着だけとなっていた。
キサラは言われて初めて気付いたのか、ズボンをきちんと穿き直す。
「……ごめんね。もう大丈夫だよ。」
ウルが視線を戻し、安堵する。
キサラは反対側の椅子に座って、ピピラの塩焼きを口に運ぶ。キサラはウルとは対照的に、ピピラを小骨ごと食べていった。
キサラは魚料理となると殆ど骨すら残さないくらいに食べるので、ウルはあまり気にしなかった。
「ごちそーさま。」
両手を合わせ、キサラが言う。ウルが時計に目をやっていたので、キサラもそちらに目をやった。
「そろそろ行こうか。」
「…もうこんな時間だったんだ。」
ウルは荷物を手に取り、キサラも慌てて出掛ける準備をする。
この辺で〆
中途半端に切った気がするけどまぁいいや