オリジナル物語『願いの泉』 | Re:Oneself

Re:Oneself

もはやなにものでもない駄文。


Oneself



森の中を男が一人歩いていました。
森には願い事を叶えてくれる女神がいる泉があるという噂があり、彼はその泉を探していました。


もういつから歩いているかも忘れてしまいました。
しかし、いつまでも周りは見えるのは木々だけで、まだ泉は見つかりそうもありません。
不思議とどれだけ歩き続けても、あまり疲れることはありませんでしたが、男は近くにあった大きな木に寄りかかり、座って一休みすることにしました。



いつしか男は寝てしまったようです。
ふと目を開いた先には、さっきまでなかった泉が見えます。


寝ぼけたまなざしで、夢の中にいる気分でフラフラと泉に近寄ります。
覗きこんだ泉の水は青く澄んで、どこまでも深く続いて底が見えません。
自分の顔さえ映らないほどです。


しげしげと泉を眺めていましたが、不意に泉の奥深くから輝きだしました。
輝きはだんだん強くなり、男は目を開くこともできなくなり、しばらく目を閉じて光が落ち着くのを待ちました。
やがてうっすらと目を見開いた先には、なんとも美しい女の人が泉の上にたたずんでいます。



「―――――――――?」




美しい女性はおもむろに口を開き、何かを伝えようとしていますが、男は女性の言葉を聞いたことがなく、理解することができません。
しかし、きっと願いを叶えてくれる女神に違いないと、男は願いを伝えようとしましたが、とっさに何を伝えるかわかりません。




「・・・・・・・・・・」




願いが見つからず、言葉が出ないまま立ち尽くす男を残して、言葉なく無表情に女神はすーっと溶けるように消えてゆきました。




「なんのためにここに来たのだろう…」



力なく崩れ落ちた男はそう呟き、これまでのことを思い起こそうとしました。
彼はまだ少年の時にこの森に足を踏み入れました。
その時は強い願いを内に秘め、自らの成功を信じて疑いませんでした。


あとには力が抜け、膝をつき、うなだれた男が一人残されていました。
そのまま転がるように泉の中に落ちた男は、力なく沈んでゆきました。


やがて、息苦しさに堪えかね、彼は慌てて水面に向って泳ぎました。

水面から顔を出した時、先ほどまでいた男の姿はありませんでした。
代わりに泉から這い上がったのは年端もいかない少年でした。


泉のほとりにたどり着いた少年は息を整えている間に、今までの自分の身に起こったことを思い出そうとしましたが、思い出せません。
ですが、彼が目指していた夢のことを思い出すと、いてもたってもいられず、彼は大急ぎで街に戻ることにしました。


振り返ることなく走り去っていった彼ですが、彼の後ろには泉はあとかたもなく、生い茂っていた木々もなくなっていました。



不思議と夢を思い出させてくれる森と泉がどこかにある…そんな話があるということです。