1982年9月30日発売の『漂流者たち』はシングル43枚目で、独立前の芸映プロダクション所属で最後の曲です。この曲はヒデキ自身が主演を務めたドラマ「ホーム・スィート・ホーム」の主題歌にもなっていますが、残念ながらベストテンには入りませんでした。ベストテンにはこの曲から連続して10曲ランクインしていません。

 

郷愁のある曲ですが、若干演歌っぽい雰囲気で過去のシングルとは毛色の違った一曲になっています。その理由は演歌を多く手がける石坂まさをさんの作品だからでしょう。石坂作品の代表曲は藤圭子さんの「圭子の夢は夜ひらく」や「命預けます」郷ひろみさんの「花のように鳥のように」等々

 

この曲で印象的なのは歌番組やライブで泣きながら歌ったことでしょう。特に11月8日の「夜のヒットスタジオ」で2コーラス目から涙を拭いながら歌う姿に出演者たちもテレビを見ていたファンも驚きを隠せませんでした。番組には問合せが殺到したようです。

 

 

ヒデキはその歌詞の中に出てくる情景が自分が広島から家を飛び出して苦労したデビュー時のことを思い出してしまったためと話します。

「この歌をうたうと、上京したばかりの自分を思い出して自然と泣けてくるんだ」


「歌詞の一部に”夕焼けには父母も薄れ、戻れる道もない″という一節がある。旅立ちの日と歌詞がオーバーラップして、レコーデイングのときに声をつまらせていた(RCA岡村ディレクター)」

 

後年、テレビ番組でこの曲について「ホントを言うと暗くてあまり好きじゃなかった」と話すヒデキ、でも暗いから好きじゃ無いというより、若い頃の苦労を思い出して嫌なんじゃないかな。それに何度も泣いたからかもね。ライブでもなかなか歌ってくれないナンバーになっています。

 

私にとっては地元を離れ東京で初めての一人暮らしを始めた年の曲、最初の半年は学校やバイト、そして東京生活に慣れるまでバタバタしていたので感傷に浸る間もありませんでしたが、9月ともなると秋の気配も併せて、何となく物哀しい日々を送るようになりました。

 

よく学校帰りやバイト帰りに、暗くなった夜道をこの曲を口づさみながら、家路についた記憶が鮮明です。今でもこの曲を聴くと、あの時代を思い出して切なくなります。