ただ、2013年10月11日金曜日に至る4日間にスイスのある街で医療関係者がとった行動があったからこそ、わたしはまだ生きているという気がして仕方がない。なので、あとひとつだけ短い話し。
当時、わたしは「たまたま」スイスいた。国際機関で働くので、ある国からある国に転勤する「つなぎの期間」、当時スイスに住んでいたパートナーの所にいた訳だ。そこで青天の霹靂。「がん」が見つかった。さあ、一体どうしよう。
この国に住む外国人の間には不満の種が2つある。わたしの主観ですが。
不満のトップは日曜日。日曜日には全く買い物が出来ない。日曜は「休むこと」が義務なのだ。観光地指定の街以外では、店やレストランは全て日曜休業。日曜に休まずに働いて商売をしたければ、特別営業許可を得るためにお金を払わなくてはならない。そこまで徹底的に日曜日に国民を働かせないことにこだわる。消費者側は、月曜から土曜の間に用事をすべて済ませなくてはならない。なので、必然的に「曜日」が生活のリズムの中心となる。
不満の第2位は、医療サービスの「ゆっくりさ」だ。レベルは高いのに、とにかく手間と時間をたっぷりかける。「急ぐ」状況が皆無に近い。わたしの周囲の外国人の友人達は、医者とのアポを待っている間に死んだらどうするんだと口をそろえて厳しいご意見だ。わたしも昔はその一人だった。例えば、大腸がん検診のアポは半年以上前から予約しないととれない。医療施設のキャパが変わらないのに、患者が増加しているのだから、当然の結果だ。原因の一部にはわたし達のような外国人患者の増加があると思う。
わたしの勝手な解釈によると、このふたつには共通点がある。それは、何に関しても早めに準備をする事は可能で、ギリギリにならないと出来ない事はめったにない、という信条だ。いつの日か必ずスイス人に訊くつもりだ。やろうと思えば日曜日が来る前に買い物はでき、何カ月前からでも何年前からでも検査のアポはとれる。慌てて困る状況に陥るのは(多くが)自己責任、という考え方だと思う。一理あると思う。
あの4日間に、産婦人科のP先生、放射線の女医さん、看護師さん達が、わたしの乳がんの状況をみて「これはめったにない」と気づき、普段は2-3日後にする事を5分後にしてくれたような、昼休みの後ではなく前にしてくれたような、そんな気がしてならない。進行の早いHER2陽性がんは宝くじに当たるような「事故」だそうだ。ただの不運。患者に出会う事なく検査に専念する技師や裏方の人達がそんな事情を察し、それぞれの持ち場でちょこっと「急いで」くれたような気がしてならない。証拠はないけれど、きっとそうだという気がしている。
スイスのゆったりペースに納得できない方々、特にこの国での医療のスピードに不安を抱いている方々、本当にいざという時には早くしてくれた、とわたしは感謝してます。
つづく
