続き その2

 

次の仕事を探さないといけない。あちこちに電話をする張さん。自分の仕事だけではなく、弟分の劉さんの仕事も探さないといけない。今度は、チベットのラサまで、またバナナを運ぶ仕事だ。まず昆明に行き、そこから峠を越えてチベットに行くルート。うまくいけば5日間で行ける。

昆明で行きつけのタイヤ屋でタイヤをチェックしてもらったら、もう駄目なタイヤが何本もある。摩耗しすぎて繊維が出ているタイヤもある。手元にある金では足りない。ツケで買えるよう交渉する。張さんはツケでいいが、劉さんはまだ信用がないので、ツケでは買えない。張さんが代わりに支払うことになった。二人分でタイヤ代は30万円は超えていた。ラサについて、報酬をもらったら払うよ、と。タイヤ屋は、ツケで買って行って、支払わない奴らがいると嘆いていた。

道路でタイヤ交換をしていると、地元の警察が不法駐車だと罰金を請求。運転手が傍にいるのに、ええ!っとなるも、警察には気を遣い、労いの言葉をかける張さん。罰金は支払う。余計な出費だ。

昆明からチベットに抜ける峠は、高地で酸素が薄く、高山病に気を付けなければならない。張さん「ドライバーが朝起きていたら死んでいた。高山病だ。俺も初めて峠を越えたときは、鼻血が止まらなかった」と。

昆明からチベットへ抜ける道は、曲がりくねっている上に、狭い。いつも渋滞するんだよという箇所に来た。狭いようだ。そこで張さんのトラックの前輪が脱輪してしまう。離合しようとして、左側(中国なんで右側走行だから、脱輪は右側ですね)に寄りすぎてしまった。ここで、相棒の劉さんが活躍する。反対車線の車列に、1台1台に後進してもらうよう誘導して、道を開けて、脱輪から脱出するためのスペースを作ってくれた。張さんは、いつもトロい劉さんがいい動きをしてくれて感謝していた。

岩をくり貫いた道では、トラックの屋根がせり出している岩に当たらないよう、慎重に一人が外に出て前を誘導しながらゆっくり進む。ハンドリングを誤れば、崖に落ちてしまう。

二人で助け合いながら、進んでいるんだなあ、劉さんも役に立っているじゃないか。

チベットの高地は寒い。氷点下。夜空の満天の星は美しい!

睡眠時間はずっと4時間。睡眠を削って、走って稼ぐのだと。

寝て、さあ起きて出発だという処で、劉さんのトラックの燃料を吸い上げるフィルターが凍って、燃料が吸いあがらなくなっていた。お湯をかけて、温めるも溶けない。バーナーで炙るもだめ。

張さんがフィルターを取り出すと、すっかり凍っている。劉さんは手に持っていたバーナーで、それを炙ってしまう。燃料を吸い上げるためのフィルターなので、燃料が付着しているフィルターは引火し燃え始める。燃料タンクに引火したら爆発して大惨事になるところだった。

何をしているだ!爆発するぞ、っと怒り慌てる張さん。いやはや危ない処だった。劉さんは、あまりよくわかっていない。

燃料タンクに水が混じり、タンクの底に溜まった水だけを排出するが、燃料も減ってしまった。途中のガソリンスタンドで燃料を入れようにも高い。少しだけ入れて、途中、闇の燃料屋「小油」という闇業者から闇の燃料を買う、相場よりも安くなる。ただ質が保証されていないので、はずれを引くこともあると。「小油」は横流しや密輸の燃料を使って商売をしている、警察とも癒着してうまくやっている。あの「小油」は年間1000万円くらい儲けて、子どもに1600万もする不動産を買ってやったと言っていたと。
 

---------------------  続く