どうもこんばんは霧島です。
毎月恒例、気が付いたら月末……
もう夏も終わりですね。全然涼しくならないけど……
本当に今年の夏は朝から晩まで毎日エアコンのお世話になっています。
今日はこの前(…と言ってももうひと月ほど前だけど)観た映画、「怪物」について書きます。もう上映自体は少なくなってしまってるかなと思いますが、ネタバレしつつの感想になるので内容を知りたくない方はご注意ください。
映画館で別の映画を観てて、この映像が流れて存在を知りました。最初は「暗めの邦画かな……(ざっくりしすぎた感想)」と思って予告を観てたんですが、嵐の日に子どもたちが消えたというところで、ホラーなのか…!?となりつつも、緑の中を駆ける子どもたちと音楽が印象的で、上映が始まったら観に行こうと思ってました。結果バタバタしててめちゃギリギリに観に行くことになりましたが……
感想:良すぎた。
良いところが本当にたくさんありすぎて、もうこの一言で終わってもいいかと言う気さえしますが、せっかくこうしてブログに書いてるのでもう少しちゃんと残しておこうと思います。
まずは簡単なあらすじから。
小学五年生の息子を持つシングルマザーの早織。親子関係は良好だが、時折息子の湊は靴を片方無くしたり、水筒の中に泥水が入っていたりすることがあった。
学校でのいじめを心配した早織だったが、湊の話を聞くと担任に体罰を受けているようで、学校に赴き話を聞くことに。
しかし対応する教師たちは雰囲気が異様で、早織の疑念はますます大きくなる。事態はどんどん悪化するが、最終的に担任を辞任に追い込むことで一応の決着がついたかのように思えた。しかしある嵐の朝、物音で目を覚ました早織が湊の部屋を覗くと、そこに彼の姿はなかった。外からは湊の名前を呼ぶ担任、保利の声が聴こえる。
おおまかなストーリーはこのような感じなのですが、映画は三部構成となっており、第一部が早織(母親)視点、第二部が保利(担任)視点、第三部が湊(息子)視点で描かれます。
第一部を観た時点ではまだ大まかな流れしか分からず、どういうこと…?となるのですが、第二部が始まると徐々に点と点がつながり始めます。
怪物は誰なのか…と思いながら観ていると、ここで一気に世界が変わると思います。
第二部の終盤、学校を辞めたすぐ後の保利の姿が描かれ、子どもたちの真実が少しずつ見えてきて第三部へ繋がる。
少しずつの違和感は全て精巧な伏線になっていて、なんなら意味がまるで逆のものだと気付かされます。
怪物は誰なのか…いやみんなの中に怪物がいるし……待て待て怪物なんて本当はどこにもいないのでは……いや、そもそも怪物探しをした私自身が怪物なのかも……
観ていて本当に色々と気付かされることが多い作品でした。
構成も素晴らしかったけどセリフがとにかく良かったです。
今更の紹介ですが、監督は是枝裕和さん、脚本は坂元裕二さんです。
私は坂元さんの作品はドラマをいくつか観ているのですが、独特な台詞回しと偏屈な男性キャラが好きだなと思っていて、これはまぁ今作だと保利先生に当てはまるなとも思ってたんですが、今作は母親の早織もその息子の湊もよかった…
この作品はカンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞しています。賞からLGBTQが扱われる作品だとわかることを考えると物語の構造も予測できる部分はあるかと思いますが、そう聞いて興味がないと思った人にこそ観てほしいです。
だから本当は賞を取ることで、ある種の拒否反応みたいなものが出る人がいる可能性を考えると少しやるせ無い気持ちにもなりますが…
この部分は知っていようといまいと作品の素晴らしさに支障はありませんが、私はやはりなんの情報もない状態で臨みたい派なので観たい作品は早めに観に行く方がいいなと思った次第です。
話を脚本に戻しますが…1番泣いたのは保利先生が嵐の中で湊に叫ぶ「間違ってないよ、なんにもおかしくないんだよ」でした。第一部で早織の目から通してみる保利先生からは想像もつかないような、本当に生徒思いの姿が描かれている。これを同一人物として成り立たせている。そう言った二重の意味でも泣けました。
でもやはり1番心に残っているのは謎多き校長が湊と金管楽器を吹くシーンの、「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。しょうもないしょうもない。誰でも手に入るものを幸せって言うの」と言うセリフですかね……
そのセリフを聞いた湊にはその瞬間には本当の意味は伝わってないのかもしれないけれど、それでも「君もちゃんと幸せになれるんだよ」と言っているように聞こえて私はグッときました。
子どもの頃の世界は本当に小さくて学校が全てみたいなところがあると私は思っているので、そうやって「大丈夫だよ世界は広いんだよ」と教えてくれる存在が絶対に必要だと思うんだよな……
噛み合わず、色々なことがうまく行かないその瞬間を描くことで、観ている側に問いかけるというのがこの作品の本質だと私は思ったのですが、この映画の世界の子どもたちは、大人たちはきっと大丈夫だろうと、そう思わせてくれる優しさと力強さのある作品だったと思います。
ともすると問題提起をしただけで何も解決していないじゃないか!と言われそうですが、私はこの作品の中で答えを出さない、解決させないことこそが映画の中の彼らへの愛のように感じました。物語というか、エンタメとして彼らの人生が消費されていないことに、一つの誠実さのようなものを感じます。
そういう意味では観ている人たちのための映画だなと思うし、本当にたくさんの人に観てもらいたい映画でした。
もう横浜での上映は終わってしまったが……
演じられている役者さんたちも本当に全員が素晴らしかった……母親役の安藤サクラさんも保利先生役の永山瑛太さんも校長先生役の田中裕子さんも…
でもなんと言ってもポスターにもなっている2人を演じた黒川想矢くんと柊木陽太くんがとてもよかったです。
第三部の2人の映像は辛いところももちろんたくさんあるのですが、それと相反して美しかったです。
子役の方の演技を観る機会がそれほど多くないんですが、めちゃくちゃ自然に小学五年生なんですよね…もちろん現在の私は母親の早織と同年代な訳でどちらかというと母親視点で観るものなのかなとも思うのですが、第三章は小学生の時の記憶を想起させられました。わかる…小学生はそういうとこ、ある……そういうこと、する……みたいな……
前半から後半にかけての振り幅が広く、かつ美しい音楽と映像が相まって今も頭から離れません。本当にあの映像は何回でも観たい……
何年か前に小さな恋のメロディという古い映画を観たのですが、ラストはそれと似た満足感を味わえます。主人公の少年と少女が、大人との戦いに勝ってトロッコで逃避行するシーン…また観たくなってきたな…
というわけで、最近観てめちゃくちゃ良かった映画についてとりとめもなく書いてしまいました。正直パンフだけでは飽き足らず(これもインタビューと写真がふんだんで最高だった)ノベライズもシナリオブックも読み漁ってしまいました。キャラクターが好きだと色んな角度から見たくなってしまうよね…

円盤化された際には購入を検討しようと思います。
したらば!
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