アニメ「映像研には手を出すな!」、良いな。 | 乱歩酔歩--Random Walk official blog--

アニメ「映像研には手を出すな!」、良いな。

須々木です。

 

 



というわけで、2020年1~3月に放送されたTVアニメ「映像研には手を出すな!」について。

 

 

原作は『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載、大童澄瞳の漫画。

 

TVアニメ版は「四畳半神話大系」「ピンポン THE ANIMATION」「夜明け告げるルーのうた」などの湯浅政明監督によるものです。

 

過去作を知っている人はご存知のとおり、作品に監督の色が非常に色濃く表れるタイプです。



毎年行っている文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門大賞を受賞していたので、受賞作品展の前に見ておこうと、このタイミングで一気に見ました。

 




 

 

 






原作漫画の時点で存在している作品の強い個性を殺さず・・・というより、むしろアニメ媒体に適する形でさらに大きくバージョンアップさせた作品です。

 

アニメをつくる楽しさや苦労を“アニメそのもの”で表現するというのは、有無を言わさぬ説得力があります。


特に、突如として挿入されるクリエイターの妄想の表現は秀逸です。

クリエイター自身が、自分の脳内から湧き上がる妄想ワールドに巻き込まれていく様はひとつの見所です。


自分の中から湧き出しているのに、時としてほとんどコントロールできないアイデアの奔流。


とても概念的で直感的なもののはずなのに、それを違和感なく映像化するというのは本当に凄い。

もちろん、そもそも原作漫画の表現が秀逸なのですが、その表現の意図を汲み取りさらに豊かにするのが凄い。


見事なバトンの受け渡しです。



キャラクターも生き生きとしていて非常に好感が持てました。


癖の強い面々が噛み合っていく流れは普遍的なものであり一種の様式美。

 

清々しいほどに都合よくノンストップで進んでいく爽快感とあわせて、これぞエンタメという味わいです。

 

 

 

敢えて今風ではないタイトルやロゴでも感じられますが、画面演出や諸々表現は過去の日本アニメ文化への深いリスペクトが感じられます。
 

しかし、それでいながら単なる懐古主義やクリエイターの自分語りに終始するような作品にはなっていません。

 

やはり軸は、あくまで青春を仲間とともにひたすら突っ走ることの素晴らしさが表現されています。

 

ここは恐らく普遍的なエンタメ。

 

 

 

よりジャンルを明確にするなら、学園モノであり部活モノでしょう。

 

現代的と言える一方、あまりに多くの作品がつくられ確立されたジャンルとも言えます。

 

にもかかわらず、本作の視聴では、未知の視聴体験と感じられました。

 

「何がそう感じさせるのか」という点の追究は、創作における重要命題である「王道とオリジナリティーのバランス」を考える上でもヒントとなる気がします。

 

 

 

このような懐かしさと新しさの絶妙な混濁は、優れた原作者とアニメ制作陣により達成できたもので、本当に素晴らしいマッチングだったと思います。



また、単純にアニメ制作に関する蘊蓄も面白かったです。

 

どんなものでも、ブラックボックスの中身を見せるのはまた一つのエンタメだなと。






アニメ制作を題材としたアニメ作品ということでは「SHIROBAKO」も有名です。

「映像研」も「SHIROBAKO」も、脇道にそれず素直にアニメ制作を追っていくところは同じなので、比較は面白いかもしれません。

 

 

あくまで個人的な印象ではありますが、「SHIROBAKO」は主人公が非クリエイター、「映像研」は主人公がクリエイターというのは大きな違いだと思います。

 

よって、前者がクリエイターを非常に近い距離から客観的視点に寄って描く一方で、後者はクリエイターの主観そのものを最大限描くという違いが出てきます。

 

それぞれに特徴があり魅力があるとは思いますが、「映像研」におけるクリエイター脳内カオティックワールドと湯浅監督の表現力のマッチングは非常に相性の良さを感じるところでした。




クリエイターたちが描いた、最強のアニメ制作の世界。
 

作品世界はフィクションでも、この作品から受ける熱量はノンフィクション。
 

ノンフィクションだからこそ、視聴はリアルな体験となり、作品は視聴者の血肉となる。

そんな思いを新たにする強い作品でした。



「アニメ」より「アニメーション」を意識させるタイプの作品であり、ある程度好みが分かれる作品かもしれません。

 

ただ、だからこそ、こういうのを面白いと思ってくれる人と一緒にやっていきたいなー、などと見ていて思いました。








以下、文化庁メディア芸術祭受賞作品展より。













●TVアニメ『映像研には手を出すな!』公式サイト
http://eizouken-anime.com/

●ビッグコミックBROS.NET(原作漫画3話まで読めます)
https://bigcomicbros.net/work/6227/





sho