ベルセルクという神話
遊木です。
漫画描きを目指すものの多くが、三浦先生の作品が生み出す圧倒的熱量と、妥協のない画面作りに影響を受けたことでしょう。
漫画家はときに、物語ではなく神話を生み出します。
暇つぶしの娯楽であることが本望とされる中で、人の心を抉るような、価値観を覆すような、後世に語り継ぐべきだと思わせるような、そんな作品を、生涯かけて生み出そうとする作家が、いつの時代も必ずいます。
ベルセルクはまさに、大衆娯楽が神話になる道ほどを体現している作品でした。どんなに長い連載期間だろうと、必ず最後まで追うと決めていた人が数多いたことでしょう。私もそのうちの一人です。
ベルセルクは良く「作者が存命の間に結末を見られるのか」などと揶揄されてきましたが、それは何も、不定期な連載ペースだけに向けられたものではないでしょう。
偉大な作品の結末を切望し、なんとか描き切ってほしいという、ファンの願いの欠片でもあった筈です。
では、“世界”を前にした命の矮小さ、人の愚かさを恐れず描き続けた先生の中には、一体どんな願いがあったのか。
極限の世界の中、壮絶な戦いを続けるガッツは狂気を纏いながらも、燦然と輝く存在であったことは間違いありません。祈ることよりも、その祈ろうとする手で戦えと、ずっとずっと訴え続けてきました。
三浦先生が描き切りたかったものは何だったのか。
私たちはこの答えをずっと考え続けることでしょう。
三浦建太郎先生、その画業に最大の敬意を。
そして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
aki