アニメ「メイドインアビス」を見た。
須々木です。
今更ながら、2017年に放送されたアニメ「メイドインアビス」を見ました。
そんでもって、先日「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明」を見に行ってきました。
※原作漫画未読。
せっかくなので、思ったことを軽く書き留めておきます。
以下、具体的なネタバレはしていませんが、一応ご注意。
* * *
この言い方が適切なのかちょっと分かりませんが、何から何まで良い作品でした。
などと言いつつ、初見ではなかなかのダメージを食らいましたが・・・
はっきり言って、誰彼構わず広くおススメできる作品ではありません。
まだ見ていない人で、これから見るという人はあくまで自己責任で。
というわけで、何が良いと思ったのか、具体的な内容にはあまり触れずざっくり書いておきます。
まず、重厚でかつ細部までつくり込まれた世界観は圧巻の一言です。
ビジュアルだけでなく、文化や生態系や原理的整合性まで含めて巧みに織り上げられていて、それでいてくどくなく、作品の軸が迷子になることもなく。
すべてのシーンに説得力があり、必然性が感じられ、なんてことのないシーンを見ているだけでも想像が膨らむ。
ビジュアル的にも、厳かでかつ美しい。
巨大で深淵で人智の及ばぬ生態系の有り様を、恵みと畏怖の両面を持ったものとして、直感的に分からせてくれる。
個人的に、世界観のつくり込みというのは、己の創作においてもかなり高いウェイトを占めているので、その意味でも非常に刺激的でインスピレーションを受けるものでした。
音楽も凄い。
いちいちクオリティーが高すぎる。
振れ幅の大きいストーリー展開を一つの作品の中に繋ぎ止める上で、物凄く大きな役割を果たしているように思えます。
僕は音楽に詳しいわけではありませんが、それでも作品において音楽の果たす役割はとてつもなく大きいと思っているので、音楽を大切にしていて魅力を引き立てている作品というのは、大変好みです。
というわけで、耳から得られる満足感も素晴らしいものでした。
キャラが良い。
この世界観だからこそというのはありますが、一人一人が生きている。
一人一人が強さと弱さを抱えながら、逞しく生きている。
要素だけゴテゴテに付け足しまくった結果として「キャラが立っている」のではなく、確固たる芯とエピソードの結果として「キャラが立っている」ように感じますが、こういうキャラのつくり方は個人的に大変好みです。
特に、現実世界では成立しえない次元で描写される「厳しさを伴う愛情や友情」は印象的でした。
世界とキャラが断絶していないからこそ、違和感なく受け取ることができ、感情を揺さぶられます。
この世界で生きる上で求められる「したたかさ」は、現代社会で生きる人にとっても示唆を与えるものである気がします。
そして、もちろん、ビジュアル的にも非常に魅力的です。
アニメ的面白さと作品世界における必然性が見事にマッチしています。
さらに、これらがバラバラにならず、強烈な謎と明確な動機を伴ったストーリーでまとめ上げられています。
各要素がハイクオリティーなのに、肝心のストーリーがそれらを束ねきれず、空中分解を起こすような作品もある気がしますが、本作品は束ねてさらに上の次元に昇華させるような凄みを感じました。
食事シーンに象徴される日常シーンと、あまりにシビアな展開のギャップ。
未知の領域に踏み込むワクワク感と、そのワクワク感を打ち砕く絶望感。
両極の間を往復しつつ、増幅される感情の質感。
人間がもつ非常に原初的な部分に訴えかけるような、ある意味、究極的なエンターテインメントを垣間見せる作品と言える気がします。
簡単に「面白い」と言って済ませられる作品ではないけれど、これこそ目指したいエンターテインメントなのかもしれないなと。
というわけで、こういう感覚を人に与えられるようなものを生み出したい。
そう思わせる名作です。
続編も期待!
sho