「未来と芸術展」感想~SECTION1:都市の新たな可能性
どうも遊木です。
気付いたら2月もあと10日弱で終わる……恐ろしいぃ…毎月同じこと言ってるぅ…。
さて、今回は久々に展覧会の感想を書こうと思います。
例によって素人の主観的感想なのであしからず。
あと、先にこれだけは言っておきますが、SFの創作に興味がある人は絶対に行った方が良い展覧会です。SF創作の参考になりそうな情報がここまで凝縮されている内容はなかなかない。私の拙い感想文ではとても伝えきれないので、ぜひ、ぜひ現場で見てきてください。
<森美術館「未来と芸術展」>
あいさつ冒頭より。
「本展は、AI、バイオ技術、ロボット工学、AR(拡張現実)などの最先端のテクノロジーとその影響を受けて生まれたアート、デザイン、建築を通して、近未来の都市、環境問題からライフスタイル、そして社会や人間のあり方を考察する展覧会です。」
会場は五つに区切られての構成となっていました。多分一回ではまとめきれないと思うので、セクションごとに分割して感想を上げていきたいと思います。
SECTION1 都市の新たな可能性
ここでは、“都市”というテーマを中心に、現実で計画されている具体的なプロジェクト、未来の都市像の紹介や、現状の問題点、今後の都市に対する可能性と懸念をアート的な形にまとめ直すことで、より直感的に鑑賞者に訴えかける作品が展示されています。
大阪万博の誘致計画案や、映画(「AKIRA」「ブレードランナー」など)など、割と取っつきやすいものも展示されていたので、展覧会の入りとして良い題材だったのではないでしょうか。
都市計画案、未来の都市像については、そのまま作品の設定として利用したいぐらい魅力的なデザインでした。視覚的な美や刺激だけでなく、風土に対しての合理性やエコシティ実現に向けてのアイデアなど、設定厨には垂涎ものの情報が盛りだくさんです。
率直な計画案以外にも、都市のデザインに対して興味深いアプローチをしている作品があります。
《ポロ・シティ》では、現在の都市部における閉鎖的な建築の批判と、それらを開かれたものにするため、どのような取り組みが有効なのかを考察しています。そのプロセスを文字や図に書き起こすのではなく、レゴを使ってアナログ的表現に変換することで、鑑賞者が消化しやすいアート作品としてまとめ直されています。
…余談ですが、この作品「インセプション」の夢の世界に似ていませんか??視聴済みの人は多分分かってくれるはず。コンセプト抜きにしても、ボクセルアートとして視覚的に十分楽しめる作品ですね。
《NEO・出島》では、バブル崩壊以降、アジアのハブとしての役割を失いつつある日本と、現在のグローバリゼーション、エリート主義、格差社会への皮肉を「霞が関地区上空に、エリート向けの都市を建設」という荒唐無稽な提案をすることでストレートに表現しています。
ここまで直截な表現は野暮ったい部分もありますが、故にエンターテインメント性は高く、漫画やアニメなどのサブカルとは相性が良いのではないかと感じました。公用語や入国条件などの設定もあり、遊び心を感じます。「出島」という存在は、その扇型なビジュアルも含め面白い題材です。扱ってみたい創作のアイデアがひとつ増えたなぁと感じました。
そういえば、このセクションに限らずハニカム構造が用いられているデザイン、作品が多数ありますが、当サークルが制作したノベルゲーム「ノンノ・リレイショー」(2013)でも、都市がこのハニカム構造になっています。この辺りは原作の須々木氏の理系魂を感じますね。
SECTION1では環境問題、資源問題、物理世界と情報世界など、様々な角度から“都市”に対して切り込んでいます。
緻密に設計され、コントロール出来ることが良しとされた従来の都市価値観は形を変え、不確定要素を受け入れられるフレキシブルさこそ喫緊の課題である、そう訴えているように感じました。同時に、地球環境や国際的価値観に順応できるよう設計された都市は、そこで生きる人間に、より強い秩序、もしくは制御を求めているようにも感じます。
都市は人間のためにあるのか、人間が都市のために変容すべきなのか。それは、人間がどのくらい地球と人類という種に配慮すべきか、という問いとも繋がっていると思います。そもそも人間が“問題”と掲げる多くの項目は、地球の支配者は人類であるという傲慢から発生している部分もあります。その傲慢さと向き合わずして、エコシティ、地球にやさしい、資源に配慮した、なんてものは語れない。科学とアートが融合した表現領域にこそ、そういった部分に切り込んでもらいたなぁと思います。
都市、ひいては地球の変化に配慮し、柔軟な姿勢を模索する一方、その裏でどんどん合理化されていく人間の姿に、当事者として無関心ではいられません。より良い環境づくりを目指している筈のその先に、やはり拭えないディストピアの影が付きまといます。
今後、人間と都市はどのように姿を変えていくのでしょうか。
次回は「SECTION2 ネオ・メタボリズム建築へ」について。
aki