散歩と“場”のデザインにまつわる雑記 | 乱歩酔歩--Random Walk official blog--

散歩と“場”のデザインにまつわる雑記

須々木です。

 

徒然なるままにブログのお時間です。



 

 

 
※このエリアは、現在「ガーデンネックレス横浜」を開催中。ハッシュタグは#ガーデンネックレス横浜
 

 


先日、桜をはじめ、適当に花を愛でつつ横浜臨海部をぶらぶら歩きましたが、このエリアはかなりお気に入りの散歩コースです。


もちろん、単純に近くて徒歩圏だからというのもありますが、結構見ているだけで楽しいと思える景観が続いているためでもあります。


このエリアに限ったことではありませんが、ある程度意気込み大きな絵を描いて形成されている地区なので、個々の建築物という単位だけでなく、より広いエリアでデザインされているのが、適当に歩いていても分かったりします。

横浜港開港以降、一定の独自性を持ちつつ歴史を重ねてきたので、長い歴史とは言わないまでも、程良く歴史を感じられるのも特徴です。


気に留められないようなところにも、ちょっとした遺構などがあったりします。


さらに、街づくりにアートを取り込む傾向も、定着と言って良いレベルだと思います。
 
ちなみに、みなとみらいは、「みなとみらい21 街づくり基本協定」により、「新しい建築物を建てるときにアート作品を設置する」というルールが設けられています。
 
 
というわけで、少し歩けば何かしら発見があり、ちょっと考えたり調べたりすると「ナルホドこういうことか!」となったりします。

いろいろな情報を集めるとスッキリ繋がる。
 
これがミステリー小説の謎解きみたいな感覚で、結構楽しいお散歩となります。


そして、こういう思考回路は、僕が作品をつくるときにも結構組み込まれている気がします。
 
Random Walkの創作プロジェクトである〈ヒビカ・シティー・プロジェクト〉も、舞台となる“街”そのものがなかなか重要に描かれるので、相性は良く、「潮騒と泡沫のサマー・デイ」などを見てもらえれば、多少は感じてもらえるかと思います。
 
 
 
とまあ、こんなふうな興味の傾向を僕は持っているわけですが、これは、言い方を変えれば、“場”の成立過程、“場”のデザインへの興味です。
 
単体で存在するもの、単体で存在する情報より、それらの各要素の繋がりまで含めて捉えたいし、楽しみたい。
 
点より線、さらには面を、より面白いと感じる気がします。


展覧会でも、作品そのものだけでなく、展覧会の成立過程、貫かれるコンセプト、そのコンセプトに至る経緯などまで興味が湧いてきます。
 
このような周辺情報まで含めた楽しみ方は、ある意味で、現代アートに通ずるところがあるような気がしなくもありません。
 
現代アートは、作品だけ見たところで、「だからどうした」みたいなものも多いと思いますし。



その流れで、リノベーションした建築物というのもかなり好きです。
 
リノベーションによる建築物は、過去の姿と現在の姿が混ざり合い、他の施設とは違う魅力を感じます。

そして、横浜臨海部を中心に、リノベーションの建築物はかなり多い気がします。
 
ちょっと思いついたものを書いていくと・・・



横浜赤レンガ倉庫
⇒ もともとは明治政府によって建設された横浜税関新港埠頭倉庫。近代化産業遺産。

象の鼻パーク
⇒ 横浜港発祥の地。明治中期の形状を復元し2009年に公園として開園。

氷川丸
⇒ 日本郵船が1930年に竣工され、北太平洋航路で運航されていた。現在は、博物館船として山下公園に停泊。国の重要文化財。


日本丸
⇒ 1930年進水の航海練習のための大型練習帆船。日本丸メモリアルパークで展示&公開。国の重要文化財。

ドックヤードガーデン
⇒ 日本に現存する最古の石造りのドックヤードを復元・保存したイベントスペース・オープンテラス。横浜ランドマークタワーに隣接。

汽車道
⇒ 1911年開通の旧横浜駅(現・桜木町駅)と新港埠頭を結ぶ臨港線の廃線跡を利用したプロムナード。


山下臨港線プロムナード
⇒ 象の鼻パークから山下公園にかけて続く遊歩道。国鉄山下臨港線跡を流用したもの。

山手の西洋館
⇒ 長らく外国との接点となってきた立地から、当時の建築物がいくつか無料開放されている。

野毛山公園
⇒ 日本初の近代水道の施設設置。その後、日本貿易博覧会会場などを経て、様々な変遷を遂げ、現状では野毛山動物園などがある。
 
三溪園
⇒ 実業家の原富太郎により1906年に造園。戦後、再整備して現在に至る。敷地内に、国の重要文化財10件など。



リノベーションということで言えば、他にも、横浜駅から桜木町にかけての東横線廃線跡の遊歩道化、産業遺構のハンマーヘッドを活用した公園整備(新港地区)など、現在も続々進んでいます。


また、
横浜市が推進する「歴史的建造物や港湾施設等を文化芸術に活用しながら、都心部再生の起点にしていこうとする文化芸術創造の実験プログラム」であるBankART1929に関連する施設も、基本はリノベーションっぽい感じです。
 
都市に隙間があればそこにアートを突っ込む流れが感じられます。



あとは、最近話題のやつで、横浜駅に隣接するアソビルも典型的なリノベーションです。

集配業務機能移転によりあいた横浜中央郵便局別館を活用した複合型エンターテインメントビル。
※横浜中央郵便局は、日本の近代郵便制度創設にあわせて明治4年に開設。

これぞまさにリノベーションという感じで、郵便局の別館の趣きが残ったまま、アーティストなどの手も借りながらうまく商業施設に転換されています。

結構DIYな感じで、遊び心を感じるし、その遊び心がクリエイティビティに繋がっている気がします。
 
たぶん、使える資金などに制約があったのだと思いますが、そのような条件の中で最大限面白い“場”を生み出そうとした試行錯誤が垣間見えます。
 
普通に魅力的なコンテンツに溢れていますが、そういったことを念頭に眺めてみるのも面白い刺激的な空間を有する施設となっています。



・・・などと、まとまりなく書きましたが、こういう情報をもって散歩をすると、それはそれで面白いネタに事欠かない、しかも、それがかなりの高密度で存在するので、散歩するにはちょうど良いところです。
 
ちなみに、今回は、お散歩の話からスタートしたので、物理的に存在する空間としての“場”のデザインだけに触れていましたが、僕は、物理的に存在していないタイプの“場”のデザインも面白いと感じます。
 
創作という意味では、単体の作品創作だけでなく、より概念的に〈“場”を創る〉ということ自体、創作活動だと思うし、面白いと感じるジャンルです。
 
実際、「Random Walk」自体を、そういう感覚でとらえている側面もありますし、他にもいろいろあります。
 
詳しくはここでは触れませんが。

 

sho