【サッカー】ハリルホジッチ前監督の会見を見て
須々木です。
ツイート連投でいこうかと思いましたが、ボリューム的に厳しかったので、こちらに書き残しておきます。
創作要素ゼロです。
4月9日に解任された、サッカー日本代表の前監督ヴァイッド・ハリルホジッチが会見をしました。
このような会見を開くこと自体異例ですが、その会見の内容を見て思ったことを書き留めておこうと思います。
【参照】 「問題があるとなぜ言ってくれなかった」 ハリルホジッチ前監督 解任後の会見
以下の内容は、当然のことながら、一個人としての意見です。
一般論とは限らないので、その前提で読んでください。
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ハリルホジッチ前日本代表監督の会見の中で、枝葉末節を大胆にそぎ落としてエッセンスだけ残せば「問題があるとなぜ言ってくれなかった」という引用記事のタイトルそのものになるだろう。
そして、これを見て「問題があると言っていないわけがない」と思った。
そもそも、マスコミを通じて漏れ聞こえてくる情報の中にも、十分それが含まれていた。
ただ、これには注意が必要だと思う。
つまり、日本人的感覚では「問題がある」と伝えていた。
ハリル的感覚では「問題がある」とは言われていない。
結局、こういうことなのだと思う。
つまり、日本特有の“察する文化”と欧米文化圏を中心とする“言ったこと=思ったことの文化”が正面衝突したのだと。
結局、ハリルは、日本特有の「本音と建て前」に苦慮し、対応できなかったのだと思う。
この点では、ザッケローニが驚くほど優れていたので、周囲に油断があったのではないかと思ったりする。
「本音と建て前」の文化が、グローバルスタンダードではないとの認識を、日本人スタッフたちの間で共有する必要があったのではないか。
代表戦があれば、試合前後に代表選手たちのコメントがそのまま報道されるが、それらを継続して見てきた人間として言えば、正直、ハリルが今回の会見で語った内容、そこから推察されるハリルの認識は、やはり少なくないズレがあると感じた。
つまり、選手やスタッフの「建て前」を「本音」として認識してしまっているが故に、相互で目指す方向性が離れていってしまった気がする。
ハリル監督なって以来(特にアジア最終予選突破後)、選手たちのコメントも、言外に別の何かを匂わせる表現が多かった。
ただ、この点をもってハリルを責めるのはお門違いという気もする。
生きてきた文化圏が全く違うのだから、ハリルを監督に据えた以上、そこは周囲がしっかりサポートしなくてはいけなかった。
推測にはなるが、ザッケローニのとき、このサポートはほとんどしなくても成立したのではないかと思う。
Jリーグの外国人監督でも、この点のサポートがほぼ不要の人が多々いるように感じる。
しかし、これは当たり前のことではなく、彼らがその点において非常に優れているに他ならない。
ハリルに関して、こういった柔軟性に乏しいというのは、事前に情報収集していれば必ず耳に入っていたはず。
問題は、監督選考の過程で、この点を過小評価してしまったことだろう。
ザッケローニがワールドカップ本戦で成果を上げられなかったので、その点を埋めることをを第一に考えての監督選考だったというのは、誰の目から見ても非常に分かりやすい。
実際、ブラジルW杯でアルジェリアを率いたハリルの戦いぶりは期待の持てるものだった。
しかし、「本番での戦いぶり」だけに特化しすぎた選考だったと言えると思う。
完全に今更な話だが。
つまり、ザッケローニに足りなかった点に視線を集中させてしまい、ザッケローニの優れていた点が頭から抜けてしまっていた。
もし、ザッケローニの優れていた点をそのままに、ハリルが持つ「本番での戦略」を上乗せできたら、それはもちろん最高だ。
でも、ザッケローニの優れていた点を軽視してはいけなかった。
それは、万人が持っている能力ではなかったわけだ。
このあたりも、日本的な思考の癖を感じずにはいられない。
ダメなところばかり強調して、良いところを忘れてしまう。
だから、ついうっかり、今まで掴んでいた良いものをどこかに置いてきてしまう。
すぐに「何がダメだったんだ」という話題になる。
「何ができたんだ」とはならない。
この点の分析や意識共有が、ブラジルW杯の不完全燃焼のあとにしっかり為されていれば、そもそもハリルを選ばなかったか、もしくはハリルをサポートする体制をもっと真剣に考えて、より良い状態に至ったのではないだろうか。
監督解任のタイミングについてはいろいろ意見がある。
個人的には、やむを得ないという意味で、理解はできる。
長年代表戦を見てきて、過去にも微妙な試合は多々あったが、先の欧州遠征2連戦は、内容的にも歴代最悪級で、コンディションや戦術がどうという以前の問題だというのは、画面越しにひしひしと伝わっていた。
正直、チームと呼ぶのは厳しいレベルだったので「このままロシアに行って爆死だな」と思っていた。
座して死を待つのも一つの美学かもしれないが、最後まで足掻こうという協会の選択は、この時点で評価に値するものだと思う。
「もっと前の時点で解任すべきだったのでは?」という意見もたくさんあると思うが、一度据えた監督を更迭するというのは容易ではない。
特に、日本代表監督では、そうそうあることではないし、とてつもなく重い決断となる。
仮に本戦で多くの人が納得する結果が出なくても、何かを貫いてやり遂げたなら、その後に繋がっていくだろう。
そう考えれば、健康問題や不祥事がなければ基本的に代表監督解任という選択肢は存在しないというのが、近年の代表の空気だったと思う。
しかしながら、今回は、貫くべきチームという土台が崩れかけてしまった。
想定が甘いと言えばそれまでだが、この点は協会側も想定外だったのかもしれない。
これらを総合的に考えれば、更迭のタイミングは、十分妥当性があると感じる。
同時に、ロシアW杯が始まる前の現状における、中途半端な結果論として言えば、もっと手前の時点で協会側に判断ミスが生じていたと言わざるを得ない。
その判断ミスを後から覆せないという前提のもとで「十分妥当性がある」と感じるということなる。
あとになって「あーすれば良かった」というのは簡単だが、時間遡行できるわけではない。
結局、反省し次に活かすのみ。
その時々で最善だと思う手を打つ他ない。
ハリルホジッチ前監督が、日本のために尽力してくれたという点に疑いはなく、その点に深く感謝しなければならないが、人間である以上相性というものがある。
彼にとって申し訳ないと思う一方、解任は妥当と感じる。
ロシアW杯開幕が近づいているが、ここでもし決勝トーナメント進出を果たすことができれば、結果的には協会側の英断だったと言えると思う。
逆に、三戦全敗であれば、責任の所在をより明確にするべきだろう。
問題なのは、ハリルを連れて来た人間がすでに協会内にいないことだが・・・。
アギーレ解任のとき、自信の更迭を含めた処分を提議したとのことだが、留任ということで全会一致し、その後、彼が中心となってハリルを招聘した。
ということは、やはり協会の意思決定に問題があったということなのだろうか。
全貌を明らかにすることは、長い目で見て、非常に意味があることだろうし、説明責任はあるだろう。
・・・などといろいろ書きましたが、単純に代表選手個々にも問題があるのは言わずもがな。
メディアにしても、もっと建設的な提言を発信すべきだったが、その域にはいまだ到達せず。
今のところ、ハリルだけが人柱になってしまったが、(これ自体、監督の重要な役割の一つなので、監督が反論する余地はないと思うが)関係者それぞれに至らない点があった結果なのは明らか。
ここから多くのことを学んで、中長期的発展を目指して欲しいと思います。
そして、とりあえず、ロシアW杯がんばって!!
※日本のW杯初戦は、6月19日のコロンビア戦。
sho